君にありがとう

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 岩瀬聡志、西垣哲二&岡本真夜

解説 真夜さんの9thアルバム『seasons』の9曲目、ベストアルバム『My Favorites』の2曲目に収録されている友情に感謝する曲で、「明日へ」等が近しい曲と言えるだろうか。AEON「セレブレイトスーツ」のCMのBGMでもある。

 主人公と「君」との対人関係はいまいち不鮮明だが、同性異性関係なしにはっきり言えるのは「友」達の関係にあることである。
 単純に考えるなら「Ah君にありがとう Ah笑えてよかった 二人 たとえ 離れていても Ahいつまでも 生涯の友よ」等の歌詞から、学生時代に友誼を育み、卒業することで物理的な距離を置くような関係と見るのが妥当だろう。
 実際、「こうして会うたび素直になれる 何年経っても たったひとつの帰れる場所」とあることから、主人公と「君」との距離は滅茶苦茶遠いものではなく、恐らくは主人公の方が夢の為に故郷を離れた場で頑張っているのだろう。
 そして「もっと器用に 生きられたら 夢は叶うと思ってた 自分自身に 嘘をついて でも心は 歪んでた」とあることから、主人公の歩む日々は必ずしも順調とは言えないものでも、「強がっていても 心許せる人は君だけ たったひとつの温かい場所」という気持ちで再会できるのだろう。

 菜根道場を立ち上げた当時、ダンエモンは東京で一人、職も、友も、金もない日々を送っていた。それでもダンエモンとして敬愛するアーティストを巡る幾ばくかの付き合いがあり、地元・大阪に帰ればこの曲の主人公と「君」のように再会し、憂世を忘れる時間を持てる友との時間に癒される時を感じる事が出来たから、この曲の主人公の気持ちはよく分かる。
 今は地元に帰還したので、その有り難味を時として忘れれそうになるが。

 人間は孤独や失敗に耐える日々を送ることも時として必要である。しかしながら逆境に負けてしまうことと、逆境と逆境として受け止める事は別儀である。
 決して弱き心ではなく、自らの心根の強さの基を再確認する意味で「Ahあの日の思い出 Ahあの日の約束 いつも心に いつまでも二人を Ah照らして輝き続ける」「Ahどんな時でも Ah変わらず見守ってくれる たとえ 離れていても Ahいつまでも 心の友よ」「Ah君にありがとう Ah出会えてよかった 君の存在に 君の優しさに感謝 ねぇ また頑張れる気がする」といった気持と向かい合うことも大切であることをこの曲は教えてくれる。
 世に自分の為だけに生きている、と豪語(?)する人間や、冷め切った態を押し出す人間がいるが、意外に人間とは自分の為だけに生きる事は出来ても、自分の為だけには頑張れないものである。
 友の為に頑張る、というのは友情の度合いにも左右され、一概には言えないが、距離・時間・状況に関係なく「Ah君にありがとう Ah出会えてよかった」と思えることが生むエネルギーというものを重視したいものである。

 全くの余談だが、「心の友よ」と聞くと『ドラえもん』のジャイアンが時に(自らの思い込みに)感動した時の台詞を連想して、余り有り難味を感じなくなるのはダンエモンだけだろうか?(苦笑)


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新