昨日、霧雨のギャラリーで

解説　椎名恵さんのセカンド・アルバム『Le Port』の6番目に収録されている。一言で言って寂しい曲である。またタイトルと同じ歌詞がいきなり冒頭で出てくるのは椎名ソングには珍しい傾向である(タイトルと同じ歌詞は大抵サビか締めに使用される事が多い)。
　簡単に言えば主人公は待ちぼうけを食わされ、デート(と思う)をすっぽかされたのである。それも致命的なすっぽかしである。
　「閉館のアナウンス」を聞いて、帰路に就く際に「Darlig' kiss me　つぶやいて」とあるから、いつもデートの終わりはその様にして別れていた事が伺える。一人にもかかわらずそう呟いたのも習慣なのだろう。
　そしてこの苦悩の待ちぼうけをタイトルにある様に「昨日、霧雨のギャラリーで」と振りかえっている所に主人公の強烈な諦観がある。主人公がこのすっぽかしをもって「この恋も終わると　そう予測」する根拠は不明だが、「時間をつくることが　もう苦痛なの？」や「毎日　逢っていた　影響されることが　喜びだった」の歌詞から少しでも共にいる時間を持ちたがる主人公とその情熱を失った「Darling'」とのすれ違いにその原因があるのではないかと思われる。
　「週末が終わる」という寂しさや未来への失望の中に「Darlig' kiss me」と同じ韻を踏みながら全く逆方向の「Darlig' Miss me」と呟く様に歌われる歌詞は秀逸であるだけに余計に物悲しい。
　結論として「Darlig' 」の無責任さがなければ主人公の寂しさが少しは吹っ切れる方向に進むのにと思われて歯痒い。


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