昨日、今日、明日
解説 椎名恵さんの13thアルバム『GAMBARE』の6曲目に収録されているこの曲は同アルバムの中で「夜を往け」と並んでもっとも大好きな曲である!
「だけど、ホラ、元気にならなきゃダメさ」の歌詞を何度逆境において思い起こして自らを奮起してきたか数え切れない。大袈裟に言えば大恩ある歌及び歌詞でもある。勿論ダンエモンが自らを奮起してきた様に主人公も自分自身に呼びかけている。
ストーリーを追うと「ほんの2ヶ月前に彼と別れ」た主人公が憂さ晴らしをしようにも思い通りにならなかったり、自らの感情を偽れなくて苦悩するが、滾る気持ちをぶつけ得る明日に挑もうと自らを奮起させる内容になっている。
「手当たり次第かけた電話」や「夢なら持っているし、自由に生きてもいる」や「いつの間にか寂しさに酔ってる」といった歌詞に心の痛手を紛らわそうと四苦八苦している主人公の足掻きがうかがえる。
だが、人間誰しも自らの感情は偽れない。そしてそんな心情が表情の何処かに表れるから「この頃笑う事が急に少なくなった 鏡のぞいても自分でもイヤになるよ」となるのだろう。容姿やおしゃれには無頓着なダンエモンだが、やはり心に闇を抱えている時の自分の顔は鏡で見ていて気分のいいものではない。
逆を言えばだからこそ無理矢理にでも笑った方が心に奮起の種を植え付け、新たな幸を呼ぼうとの意がうかがえる。椎名版笑う角には福来たる、と言ったところですな。
勿論主人公も容易に前向きになったわけではない。「恋するのも自信なくて ずっと変われない」や「あせる気持ち隠しながら 今日も変わらない」といった苦悩の歌詞にもそれが表れている。だが結局の所どうしたいのかは自分自身が良くわかっている。少々婉曲気味だがその意思を表しているのが「胸に秘めた情熱を眠らせてちゃ もったいないよ」だろう。
歌詞もさることながら曲調もまた憂鬱をふっ飛ばして奮起するに相応しい一曲である。タイトルこそは「昨日、今日、明日」だが、もっとも重んじられているのが「明日」である事は言うまでもないが、その為に「今日」を笑って「昨日」を振り切ろうとする姿勢が秀逸である。
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