Kissしたい

作詞 椎名恵 作曲 羽場仁志 編曲 勝又隆一
解説 椎名恵さんの9thアルバム『ガラスの月』の2曲目に収録されている。別れて尚忘れ得ぬ「あなた」への思慕を「Kiss」と言う具体例を持って表し、その愛が帰る日を願う曲である。  タイトルの「Kissしたい」を額面だけ受け止めると、主人公が「あなた」「Kiss」したがっている能動的な曲に思えてしまう。もちろん「つま先を立てて Kissしてみたいの」とあるようにそれはそれでその通りなのだが、同時に「あなたがKissを したいの望むまで」とあるように受動的な面も併せ持っている。
 不思議な事に「Kiss」という具体的な愛情行為をサビに持ってきているにもかかわらず、この曲は前々いやらしさを感じさせない。何故か?
 それは曲調のさわやかさに加えて、主人公が極めて強い気持ちを持ちつつも相手が自然な心から自分を求めてくれる事を待つという極めてプラトニックな描写が際立っているからだろう。
 主人公は「できれば一人で居て欲しいわ その笑顔を他の女性と分け合うことなどできないから」と冒頭でいきなり独占欲を露にしているが、その一方で「受け止めても 拒んでも 自由」とし、「こんなにも純粋な 愛を無駄にする ことはないと思う」という風に最後には「あなた」が自分の元に帰ってくるいう確信をも露わにしている。恐ろしいまでの自信家である。
 正直、女性に愛された事のないダンエモンにはとても抱けない自信である。歌詞の中には主人公が我が元を去った「あなた」が再び帰り来るために具体的根拠は示していない。あるとしたらそれは主人公自身の「純粋な愛」に他ならないが、これだって揚げ足を取れば「自己満足」の一言で片付けられない根拠としては薄弱なものである。
 それでも主人公が「あわてずに待ってるわ」と言えるのは、「純粋な愛」がとことん「純粋」だからだろう。勿論打算や世間体など一寸も介入できないぐらいに。
 締めくくりに加えたいこの曲への感想は、こんな「純粋な愛」を抱かれる存在でありたい、とのことである。


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