胡蝶の夢

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 西平彰
解説 大黒摩季さんの9枚目のマキシシングル曲で、東海テレビ・フジテレビ系全国ネット連続ドラマ「新・風のロンド」の主題歌である。
 ダンエモンは2005年12月31日の長島スパーランドでのカウントダウンライブで初めてこの曲を聴いてストレートな歌詞で心の深淵から搾り出す叫びのような歌詞に心振るわされ、リリースまでの1ヶ月と1週間がかなり待ち遠しかったものである。
 曲調や、夢を追う様に相手を求める様が「砂の孤独」に似ていもいるが、感情はもっとストレートである。

 歌詞の基本的な流れは様々な意味において耐えて来た主人公が「あなた」と一緒になるために最早我慢や待ち侘びる事が出来ず、積みに積んできた感情を叫び、届ける様に歌い上げるものとなっている。

 殊に「教えて どれほど泣けば 傷ついたなら あなたのもとへたどり着くの」「教えて どんな犠牲を 差し出したなら 自由の羽 授かるのでしょう」という歌詞には既に耐えに耐えてきた過去が滲み出ていて、結果の伴なわない事象の為に今までと同じ待機は出来ない気持ちが色濃い。
 それは相手に求める「攫って」「見つけて」という半ば命令であり、強引にでも殊を運ばせんとの歌詞での締め方にもよく表れている。  特に後者の「犠牲を 差し出したなら」を長島で最初に聴いた時には驚かされた。「あなた」が丸で生贄か供物を持って相対する神の如きで、それでも求める事は加護でも慈悲でもない点がとてつもなく深い。

 それに併せて注目したいのが、主人公の「あなた」を求める気持ちに理想をかなぐり捨てている姿である。
 歌詞では「優しさを 知るための痛みなら 心などもういらない」「すべてを 癒し諭す愛などないなら 咽び流す涙も乾くだけ」に表れていて、そこには理想もプライドも美徳もなく、ただただ現状を脱却して貪欲なまでに、ストレートに、理屈をかなぐり捨てて「あなた」を求める気持ちが強烈で、それゆえにそれが素晴らしい。

 得てして、世の中欲しいものほどなかなか得られない。
 そんな世の中の甘くない様を痛感するからこそ、本当に欲しいもののためには何かを犠牲にしたり、辛い目に遭う事が必要な事であるかのように錯覚する事がある。
 「どれほど泣けば 傷ついたなら」「どんな犠牲を差し出したなら」に明確な答えなどないことは「教えて」と絶叫する主人公自身が本当は一番分かっている事なのだろう。
 だから欲しいものを得られない辛さを紛らわす為の別の辛さを無理に求める人間の性に惑わされない純粋且つ相手を望むストレートな気持ちをこの歌に注目し、そんな相手と恋だからポジティブもネガティブも超越して思いを遂げたい気持ちを自らの人生にも持ちたいと思うのである。


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