恋時雨

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 西垣哲二&岡本真夜

解説 岡本真夜さんの8thアルバム『Soul Love』の6曲目に収録。同アルバム収録曲では「君遥か」に抜きん出て失恋の悲哀が色濃く反映されていて、想いの強さは「足音」とタメを張るが、「愛も思い出も ロックし」て一応は心の整理をつけている分、「刹那」に込められた強さでは「足音」にも負けない。

 タイトルでもある「恋時雨」「時雨」が涙雨であることは明白だが、「愛も思い出も ロック」していた筈が「夕暮れ街角」で偶然に「あなた」と再会した状況で「あの日の残像 ゆらゆら揺れて 甦る声 惑わす鼓動 塞いだ」「ただ懐かしい? 今も恋しい? 答え 迷路 今も旅人」「覚悟はできてるはずだったのに ずっとあなたから 逃げていた」といった歌詞に、過去において失う恋と「あなた」への想いを自分の中で強引にねじ伏せた苦渋が滲み出て痛々しくもあり、そこに見え隠れする「刹那」的な感情が儚くも美しい。

 歌詞の流れから主人公が失った恋に対して尋常じゃない未練を抱きつつ、それを必死に断ち切ろうとしている姿が「交差点 ぶつかる肩 一粒の涙 落ちる 交差点 立ち止まる はらはら 恋時雨」の歌詞によく表れている。忘れられない感情を面前に出している「足音」に対して、この曲ではその時に抱いていた感情を想い切り肯定しつつ、それを断ち切ろうとしている様が実に好対照である。
 失った恋にどう向き合うかは本来答えを必要としないだけに、実際にエンカウンターした時の「刹那」には一言では形容できない様々な想いが去来するのだろう。

 歌詞の中でダンエモンが最も注目するのは「体中愛 体中で感じて 私全部で愛した人よ」である。「私全部で」の歌詞には歌詞内容・曲調的な雰囲気が丸で対極ともいえる「泣けちゃうほど切ないけど」を真っ先に思い出した。
 同じ「私全部で」の想いも、この「恋時雨」では過去のものであり、今の主人公の後ろ髪を引くものであるのに対し、「泣けちゃうほど切ないけど」では思い切り現在進行形で、幸せの絶頂ともいえる。
 だが、悲恋にせよ、熱愛にせよ恋愛に対して常に「私全部」でぶつかれる恋を尊いと思うし、そう想って恋に飛び込める女をものにしたいと思う自分であることをダンエモンは否定しない。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新