この星空の彼方

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 森俊之


解説 岡本真夜の11番目のシングルアルバムでアルバムではフィフス・アルバム<『魔法のリングにKissをして』の9番目、ベスト版アルバム『RISE Ⅰ』の11曲目に収録。真夜ソングの中でも屈指の暗い曲である(注:「十七歳の天使」は別格)。
 何と云ってもこの曲は乱暴な書き方をすると人の死をきっかけに生まれており、シングルジャケットの黒ずくめの服を着た真夜さんのを遺影の如くジャケット全体に黒の縁取りがなされていることも故人への弔意を表しているのは想像に難くない。
 1999魔法のリングにKissをしてツアー及び、その後のライブでもこの曲が歌われる度にで真夜さんが語るところによると、この曲を作る前にほぼ時を同じくして二人の女性から愛する人を病で亡くした事の悲しみを綴ったファンレターを受け取り、それをきっかけとしてこの曲は誕生した。ちなみにその二人の女性には真夜さんの口から電話上にて曲の誕生と公表の了承を得る確認が為された。
 ここまで書けばはっきりしていると思うが、歌詞は病気で亡くなった愛する人を惜しみ、その悲しみの中で会いたい気持ちと転生後の再会を切望する内容となっている。

 必然的に歌詞には「あなた」を惜しむものが満載されるのだが、その描写が「あなた」との触れ合いと果たせなかった約束の二点で集約されていることに注目したい。
 前者は「一度だけ 手紙をくれたこと 覚えてますか 赤いカードに"Happy Birthday"」「もう二度と 触れられない頬も 唇も指も… その笑顔も」であり、後者は「最後の夜 病室で 「お花見に 行こうね」って」「春を待たずに 星空へ あなたは逝ってしまった」である。ここまで様々な想いを重ねて成就した愛のパートナーなら神にまで食って掛かる主人公の気持ちはよく分かる。

 幸いというか必然というかダンエモンは恋人と死に別れたことはない(令和六(2024)年五月一〇日現在)。しかしある程度の年数生きていれば死に別れた大切な人々が少なからず存在する(実例を挙げると平成二六(2014)年一二月に父を亡くした)。そんな時誰しも死の事実を受け入れ難く、またいるのかいないのかわからずとも死を司る者に抗議したくなる。
 加えて主人公がいつまでも悲しんでいてはいけない、思い出として心の整理をいつかはつけなければならないことを理解しつつも「今は笑えない ごめんね 今は泣かせて あなたを 愛してる」の歌詞が涙と胸の熱さを誘う。

 願わくば真夜さんが語った様にこの曲の存在を通して愛する人を失った二人の女性の楽しい思い出と悲しい胸の内が一つの整理となり切って欲しいものである。間違いなくこの曲は名曲だが、その魅力を心底理解するにはまだまだ時間が欲しいと敢えて思う。


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最終更新 令和六(2024)年五月一〇日