ル・ポールはさよならの港

         作詞 麻生圭子 作曲 網倉一也 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんのセカンド・アルバム『Le Port』のタイトルに代表されているようにトリである10番目に収録。  帰ってくることがかなり疑わしい恋人の帰りを信じて待ちわびる女性の姿を語る歌詞になっているが、かなり凝った作りになっている。
 ル・ポールがどこの国の港かは調査不足で不明なのだが、曲に出てくる「男」は港から港を渡り歩く船乗りのドンファンらしい。そしてその「男」の帰りを待つ「彼女」だが、どうもこれは主人公のことでないかと思われる。
 「男」の帰りを信じたい、疑いたくない一方で当てのない帰りを健気に待ち続ける辛さ苦しさを「男」に伝えたい、そんな矛盾する気持ちを併存させる為に敢えて「男」「彼女」という第三者の視点を取っているのではないだろうか?と思われるのである。その根拠となる歌詞が「季節だけなら誰でも待てるけれど 別の明日を棄てて一つの愛を待つ 彼女のような人生もあることを こんな寒い夜はあなたに伝えたい」である。
 何か椎名さんが今だに独身である(2004年3月現在)ことに対して、 帰る事のない一人の男性を延々と想い続けているからでは?との想像が頭をもたげてしまった……。
 理屈の上では矛盾する、相反する想いというものが心の中では容易に併存し得る。信じることより疑う事の方が簡単ではあるが、それでも人間は信じることの方を望むものである、と言うことを改めてこの歌は教えてくれる。帰ってきてやれよ!「男」!!


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