Marionette

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 高山和芽、西垣哲二&岡本真夜

解説 真夜さんの9thアルバム『seasons』の8曲目に収録。終わった恋や想い出を振り返る内容の曲が多く収録される同アルバムの中にあっては異色な恋の始まりを唄ったものだが、その始まりは望ましいものとして歌われていない。

 歌詞から推測するに、「あなた」が主人公に惚れているのは間違いないだろう。しかしながら主人公は想い出の中の「あの人」を忘れてはおらず、「あなた」「あの人 重ねてるだけ」とあるように「あの人」の代役を求められているに過ぎず、主人公もそこに数々の躊躇いを見せ、そんな恋の始まりを決して是とはせず、「素直な恋じゃない」と評している。

 「きっと 傷つけるだけ きっと 傷つくだけ」と予測し、「戻るのなら 今」と自問自答し、にもかかわらず、恋が「始まってしまった」理由は極めてはっきりしている。
 「私 孤独から 離れたいだけ」の歌詞が説明の必要がないくらい端的に言い表している。
 例え傷つく結果に終わってしまうことが予測されても、「優しい笑顔」「くちびる重ね」ることに、「惑わされながら 誘われるままに 始まってしまった」のも、すべては「孤独」「寂し」さから逃れたい一心で、「あなた」の言動に流されるだけの自己を、さながら糸で操られる人形=「Marionette」に擬えているわけだが、そうしまで逃れたい「孤独」「寂し」さとはどれほどのものなのだろうか?
 そして「孤独」「寂し」さから逃れる為の、「恋」とは呼び難い主体性無き逃避はどこか、アルバム『Hello』収録の「ゆらゆら」を彷彿とさせる。

 「お前は誰それの操り人形だ!」と言われて気分のいい人間はいないだろう。だが、自分が個人や立場や状況の「Marionette」と分っていてもそこから脱却できない時がある。そこは理屈では割り切れない複雑な要因が存在することが多い。
 正直、今カレに元カレの代役を求め、「始まってしまう」「始まってしまった」と変化した恋の行方は余り想像したくないのだが、実の所、ダンエモンにもそんな風に始まった恋に記憶がない訳ではない。もっとも、この曲の主人公のように求めに応じたものではなく、こっちが求められもしないのにぶち当たったという点で大きく異なるのだが(苦笑)。
 人間誰しも「Marionette」ではいたくないものだが、いっそ「Marionette」になった方がマシ、と思ってしまう時もある。ならばいっそ、操り人と操り手だけでも正しく選びたいものである。
 投げかけられた糸を掴むしかないとは悲し過ぎる。選ぶ権利は誰しもが持って叱るべきなのだから。ちなみに道場主はかつて告白した相手に、「私にだって選ぶ権利はあるのよ!」と凄まれて………うぎゃあああああああああああ(←道場主に操り糸で絞め上げられている)。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新