新歌舞伎座新開場記念コンサート

新歌舞伎座 新開場記念『岡本真夜・植村花菜』コンサート2011





日時2011年3月22日(火)17:30開演
場所大阪市天王寺区
大阪新歌舞伎座
背景 元々難波に在った新歌舞伎座が、近鉄大阪上本町駅隣接の上本町YUFURAにて移転・復活した。その落成を記念した岡本真夜さんと、植村花菜さんとのジョイントライブである。

 舞台となった新歌舞伎座が位置する大阪上本町駅は道場主が高校時代に乗り降りした駅で、数年振りに訪れたが在学中(20年近く前)とは勿論、東京撤退(約7年前)と比べても随分雰囲気が変わったものである。
 地理的に懐かしい地である上本町にての参加には嬉しいものもあったが、正直、この日の参加には複雑なものもあった。

 一つにはダンエモンが植村花菜さんの事を殆ど知らないことにあった。
 さすがに「泣ける歌」として名高く、「探偵!ナイトスクープ」でも取り上げられた超有名代表曲・「トイレの神様」ぐらいは知っていたが、それ以外は全くと言っていいほど知らず、歌詞に惚れるタイプとしては歌詞の知らない歌は充分に堪能出来ない歯痒さが伴うし、歌われるアーティストの方に対しても「失礼ではないか?」との想いが先立ってしまう。
 とはいえ、それは植村さんのファンも同様であろう、と自分を無理矢理納得させてやはり参加するのであった(苦笑)。

 もう一つは、この日の11日前に発生した東日本大震災にあった。
 道場主の勤める会社では東北支社が大きな被害を受け、幸いにして人的被害は0だったものの、業務の立て直し以前に家族の身の安全確保に奔走する東北支社の社員達を助ける為にも、震災勃発の3日後より、3月一杯は全員休み無しで就業することになっていたのを、ダンエモンはこの日、早退して参加したのだが、勿論偽りの理由をもってのことである(正確には「前々から予定していた特別の事情」としか話していない)。
 未曾有の震災直後にあって、東北・関東の友人・知人全員の無事がようやくにして確認出来た直後ではあったが、「震災の為に今回のジョイントライブ中止になったりしやせんか?」と考えたり、震災フォローの為に仲間が休み無しに働いている最中に偽りの理由で早退してライブに参加する自己中な自分に自己嫌悪や罪悪感を全く感じないと言う訳にはいかなかった。

 ともあれ、昨年から続いていた真夜さんのデビュー15周年関連のライブがまだ続く中、その一環とは異なる異色のライブにて、ダンエモンは2011年最初の真夜ライブに参加したのだった。


1.猪名川
簡易感想 バンドメンバーと供に植村花菜さんが登場。植村さんを見たのも初めてなら、「トイレの神様」以外の曲を聞くのもこれが初めてである。

 タイトルの「猪名川」は、植村さんの出身地である兵庫県川西市に流れる川に因んでいるとのことだが、さすがにダンエモンに初めて聴く曲の歌詞を覚え切り、解釈するだけの集中的な記憶力を存在せず、歌詞は丸で覚えられない中(辛うじて旧友を懐かしんでいることだけが理解できた)、初めて聴く植村さんの訴え掛けるように押し寄せる声量に圧倒されるのみであった。

2.紙ヒコーキ
簡易感想 この曲から植村さんは自らギターを手にし出した。後で知ったことだが、アコースティックギターによる弾き語りが植村さんの基本スタイルらしい。

 どこか童謡然とした、歌詞とイントロが印象的かと思いきや、何処までも夢を諦めず、「もっと」という歌詞がこれでもか、というぐらい繰り返される様に一途さを感じた気もしたが、ファンの方々の耳目にはどう映っているのだろうか?

3.ミルクティー
簡易感想 軽快なテンポの曲と、一途さを思わせる歌詞に幾ばくかの心地良さを感じもしたが、最後の最後にしか出て来なかった「ミルクティー」の歌詞に、タイトルになるほどの存在感を、ただ一度聞いただけの時間では見出せなかった(苦笑)。

 ちなみに全く関係ないが、ダンエモンはティーよりもコーヒー派で、常にブラックの為、もう飲料としてのミルクは10年は口にしていないと思われる。

4.Only you
簡易感想 この曲では植村さんはギター無しで歌唱に集中。後で知ったことだが、曲は海外アーティストの作曲で、所謂カバーらしい。またデジタルダウンロードシングルとのことだから、そこそこの植村ファンの方には、「トイレの神様」しか知らない男がこの曲を聴いたとしったら、石を投げつけられるんじゃないかしらん? 

 想いが乗った所々で歌われた「Only you can see me」(あなただけが私を分かってくれる)の歌詞が印象的で、どこか悲痛な叫びにも聞こえた(←歌詞的に全然悲痛じゃなかったらどうしよう……)。

5.伝えたいこと
簡易感想 全く知識にない曲が続く中、ようやく植村さんの曲を、知らないは知らないなりに、純粋に曲自体を堪能できるようになった所で歌われたのが、植村さん曰く、「親友を想っての作」であるこの曲が登場した。

 辛うじて記憶している歌詞の流れからすると、恐らく植村さんの説明が無かったら、「伝えたい」相手である「君」が友人なのか、恋人なのか判断出来なかったことだろう(苦笑)。

 歌詞の一人称は「僕」だったのだが、男性の立場で歌っている植村さんも様になっていたものである。それが植村さんの歌唱力によるものか、なり切り力によるものかは、ファンならぬ身では理解しようのなかったが。

6.トイレの神様
簡易感想 真打ちの登場……というか、唯一知っている曲の登場にかなりほっとしものである(苦笑)。

 今更紹介するまでもないが、亡き祖母への想いを歌った「泣ける歌」として、世に名高く、敬愛するアーティスト以外のアーティストの曲を殆ど知らない芸能音痴ダンエモンもこの曲は知っていたし、この曲のヒットを機に、トイレ掃除と「べっぴんさんにしてくれる」という民間伝承への関心が増大したのも耳目にしていた。

 勿論生で聴いたのはこれが初めてだが、歌詞内容が歌詞内容ゆえに全歌詞を通して聴いたのは初めてではない。
 殊に思春期を迎え、「おばあちゃん」との時間に大切さを感じなくなった下り、天寿を迎える前後の「おばあちゃん」との再会と、そっけなく終わった時間と、愛孫の帰郷を待ち続けて果たしたかのように程なく訪れた臨終を、植村さんの声量を持って眼前で歌い上げられるとさすがにウルっと来るものがあった。

 余談だが、真夜さんは家庭的事情により祖父母に育てられたとのことである。亡きお祖父さんには芸能界入りを大反対され、高校時代に友人の煙草を預かって鞄の中に入れていたのを見られた際にはお祖母さんに半端なく怒られたらしい。恐らくはこの時すぐそばで聞いていたこの曲に想う所もあったのではないだろうか?
 また道場主は祖父母に可愛がられた記憶が殆どない。父方の祖父母は新潟に住んでいて、祖父は道場主が8歳の時に、祖母は3歳の時に世を去り、母方の祖父母に至っては母が父と結婚する前に若くして亡くなっているので、父方の祖父のみ2回会った記憶があるだけなので、植村さんの実体験に基づく歌詞ゆえに、成人するまでお祖母さんが御存命だったことを羨ましくも思うし、亡くして初めて無駄に過ごした時間を切なく思う気持ちも分からないではない。
 ダンエモンも幼少の頃から近所の自分と同じ世代の子供達が祖父母に可愛がられたり、ある程度成長した所で祖父母を労わったりしている姿を見ていると、叶わないからこそ大切にしたい時間が想われてならない時がある。

 それにしても、改めて聴くと10分を越える長い曲であることにも驚かされたが、この長さでありながら歌詞の意味合いがあるとはいえ、テレビでも、ラジオでも、フルコーラスで歌われることが多いことにも改めて驚かされる。
 失礼ながら今現在は「トイレの神様」の歌い手」としかイメージできない植村さんだが、この曲を越えるビッグヒットを期待したいものである。

 さて、植村さんの単独登場はここまでなのだが………………しかし、このライブレポ、植村さんのファンが見たら怒らないかなぁ?
 まあ、真夜さんファンの間ですらメジャーじゃないサイトだから、大丈夫か?(苦笑)

7.Close To You
簡易感想 ここで遂に真夜さんが登場。ファッションに疎いダンエモンは丸で上手く表現できないが、白地にペルシャ絨毯模様のような文様を黒色でデザインされた割烹着みたいな上衣(←「もうチョット適切な表現ないのか?」by道場主)に黒ジーンズといういでたちでの真夜さんは、兵庫出身の植村さんとともに関西への想い、この度の震災で被災された方々への哀悼の想いを語り合った後のこの曲を歌った。

 歌われた「Close To You」は真夜さんがニューアルバムのタイトルとした「Close To You 〜ひとりじゃないよ〜」ではなく、その曲の元となったカーペンターズの原曲の方である。

 つまり真夜さんと植村さんがデュエットした訳だが、多くの観客を前に「Why do birds Suddenly appear」「Who do stars Fall down sky」などと歌われると二人の偉大なアーティストの「遥かなる影」(←「Close To You」の邦題)を追って現れたり、落ちたりする鳥(=「birds」)や星(=「stars」)になった気分でもあった(苦笑)。

 そして圧巻だったのはラストで「WAH…」というミュージックにありがちな枕詞ともに連呼される「Close to you」の歌詞である。
 椎名恵さんが初めて聴いた時に「不思議な感動を覚えた」とする故カレン・カーペンターの声を生で聴くことは叶わないが、それでも折に触れて歌い上げられる深みとダイナミズムで彩られたこの曲のラストを、真夜さんと植村さんのツープラトン声量が眼前で響く圧倒感は、誇張でもヨイショでもない素の気持ちで「生涯の思い出」と言い切ることが出来る。
 元々この曲は全体的な流れは極めて静かで、二人のデュエット中も前半はバンドメンバー達は直立不動で動かなかったぐらいだった。それがラストにはあれほどまでに圧倒されるのだから、この感覚はさすがに文章で書き表せるものではないことを御勘弁願いたい。

 尚、この直後に舞台を去った植村さんはその後この日の舞台に現れることはなかった。次のスケジュールの都合上、大阪を離れなければならなかったそうだが、植村ファンの方々はちょっと物足りなかったのではなかろうか?
 アーティストの事情を知る術はないが、素人考えながら、その辺りの構成はもうチョット考慮して欲しい気がした。

8.そのままの君でいて
簡易感想 このジョイントライブの宣伝ポスターにて、真夜さんの代表曲として、「TOMORROW」とともにこの「そのままの君でいて」も挙げられていたので、歌われるのは予測済みだったが、いきなりとは思わなかった(苦笑)。

 昨年、妙な形で話題なりつつも、それをバネに新たなポジションを得た感のあるこの曲が、真夜さんの口から「個人的に最も想い入れが強い」一曲であることが告げられた。

 個人的な感傷になるが、前述したように、ジョイントライブが行われた上本町は道場主が高校時代を過ごした場でもあるので、「ずっと心に そっとその胸に 皆で過ごしたこの街を忘れないでね」の歌詞がいつも以上に響いた。「疲れたとき」「帰って」来る街とはチョット違うが、学生・恩師ともに男しかいない母校に対して「無理」せずに帰る場所として見直したい気分に駆られた一時だった。


 これは全くの過去の偶然で、詳細は「そのままの君でいて」の解説に記載していることなのだが、この曲はダンエモンが真夜ファンになるきっかけとなった曲で、その存在を知ったのは宮城県仙台市の事であった(完全実話)。
 ここでその詳細は語らないが、阪神大震災の記憶が生々しかった1995年に流れていた「TOMORROW」に心惹かれるも、その時点ではファンになるに至らなかった真夜ソングに、仙台で偶然に巡りあって、惚れ込み、その時仙台で聴いた「そのままの君でいて」が昨年騒がれ、そして今年その仙台の地が大震災に見舞われたのだから、思う所ありまくりである。
 勿論、こんなことで騒がれたり、想ったりすることは真夜さんが一番望んでいないことだろう。だから今度はこちらが真夜さんに対して、有形でも無形でも何らかのエナジーを送れないものかと考えさせられてしまうのである(何も送れてないけど…)。


9. 星の夜も雨の朝も
簡易感想 アルバム『Close To You』リリースから約4ヶ月を経て、アルバム収録曲への考察も深まったから3ヶ月前のクリスマスライブとはまた少し異なった楽しみ方が出来、今回は真夜さんの振り付けが妙に印象的だった。
 殊に「幸せになれるなら あなたとがいい」の歌詞において、振り上げた腕を下ろしながら、祈りを込めるように両膝を折り曲げる振りが今も脳裏に焼き付いている。

 今回もこの曲が13,4年前に出来ていたことが紹介されていたが、改めて聴くと、デビュー当時に紹介するには、ようやく成人したばかりの頃の真夜さんではチョット重荷だったのかも知れない。

10.カサブタ
簡易感想 やっとのこの曲のタイトルを見ても噴かなくなった(詳細はこの曲の解説参照)。
 先の「星の夜も 雨の朝も」に続いて、これもニューアルバム『Close To You』収録曲だが、何だかんだ言って、リリースに前後して三回連続でライブの度にこの曲を聴いている。
 歌詞には「言葉にできない想いを カサブタで塞いでく 強いフリをして」とあるが、剥がれ落ちるとともに痛みや出血を伴う「カサブタ」は重ねられない。しかし、真剣に生きて来た心の傷を乗り越えた「カサブタ」なら、「通り雨」のように一瞬の痛みでも重ねられることで、「大丈夫と言ってしまう」虚勢をもいつかは真実の「大丈夫」にしていきそうな気がした。

 阪神大震災からたったの16年という短い時間でやって来てくれやがった大震災に、どうしても多くの人々の痛みを思う時だから、「悲しみなんてきっと 通り過ぎてく」との歌詞を軽々しくは聞けないのだが、それでもそうあって欲しいと思われてならない。
 前述したように、複雑な事情を乗り越えて参加した今回のジョイントライブだから、悲しみも苦しみも本音でぶつけ合って乗り越えられる絆を願わずにはいられなかった。

11.Life
簡易感想 うーん、ジョイントライブ故にすべてが真夜ソングという訳にはいかないから、数々の名曲が数の前に埋もれることを恐れたが、昨今、いつも秘かに期待するこの曲が聴けた良かったし、定番化しつつあるのも嬉しい(笑)。

 先の曲同様、とんでもない災害から11日しか経っていないから、いつも感慨をもって聴いている「どれだけの涙 流せばいいんだろう でも 痛みのない幸せなんて きっとないから」「きっとこの先も 自信をなくしたり 愛する人さえ失うこともある」の歌詞に幾ばくかの痛みを感じない訳にはいかないし、「たとえ今が くじけそうでも 奇跡は起こる きっと 勇気ひとつで変われる」の歌詞が震災に打ちひしがれた多くの人々に勇気を与えて欲しいとも思うし、勇気を与える場があることを悲しくも思う。

 いつか復興のなった地にて、真夜ソングによって取り戻した活力が真夜さんにエネルギーを与える場に立ち会いたいものである。

12.この星空の彼方
簡易感想 数ある真夜ソングの中でも「Life」「そのままの君でいて」とは違った意味で定番化しつつあるこの歌だが、正直、時期が時期だけに歌われるとは思わなかった。

 殊に、「さよならは 言わないよ」「悲しみは まだ消えないよ」の歌詞には悲しき共感を覚え、この歌詞の様な想いを抱いている人が大勢いることを思うと、何とも複雑なものがあるとともに、「何故、誰も喜ばない地震なんて災害が存在するんだ?」と思わずにはいられなかった。

 どんな「悲しみ」もいつか「思い出」として整理しなければならない。勿論それは筆舌で語るほど簡単ではない。だからこそ「今は泣かせて」の歌詞に普段以上に重みを感じるのだった。

13.Will
簡易感想 悲しみや、そこを乗り越える曲が続いたが、ここで一転して、苦境に耐えるよりは、積極的に乗り越えんとのそれこそ未来形の助動詞と同スペリングにして「意志」を意味する「Will」を感じさせられた。

 今回のジョイントライブの舞台となった新歌舞伎座は、名前から推測するに、普段はライブよりは能・歌舞伎・芝居・寄席が主体なのだろう(全然違っていたらどうしよう……)。それ故にアップテンポな曲になっても立ち上がることはなく、静かな夜を迎え、歌詞通りに「街はもうイルミネーション」が灯って行く時間に、ダンエモンは10代後半の日々を物想っていたが、今以上に恋愛縁のなかった日々にラストのかすれるような声で囁かれる「愛してる」を当時のダンエモンが聴いていたらどんな気分になっていただろうか?(「多分、卒倒していたと思う」by道場主)

14.I blieve
簡易感想 平成七(1995)年一月一七日阪神大震災発生………平成二三(2011)年三月一一日東日本大震災発生………幸いにして、友人・知人・その家族に死者が出なかったのは奇跡に近いが、その都度これと言ったことは何も出来ない自分に切歯扼腕して来た。自分の無力を恨めしく思ったことは何度もあるが、人力では到底抗し得ない自然の脅威を前にしては尚更である。

 そんな想いが鬱積していたせいか、「信じてあげよう どんなに小さな自分だとしても 歩いてるから 見つけられる光がある」の歌詞が響いた。
 決して、曲調的には立ちはだかる障害を千切っては投げで勇往邁進するような力強さはないのだが、逆にどんな力をもってしても滅し得ない強さがあり、「歩き続けよう」「笑顔」「願う」「信じてあげよう」「想い」「見上げて」「この手」といった些細な存在や行動を示す歌詞が妙に力強く感じられた。
 勿論、これらも「believe」無しには存在し得ないことを思えば、静かな筈のこの曲の強さを改めて実感するとともに力を得た気分にさせられたのだった。

15.Alone
簡易感想 残り僅かとなった所でこの曲が弾き語りにて歌われた。タイトルでもある「Alone」=「独り」の語に対し、「反対側のホーム あなたと彼女 見つけたの 楽しそうに 二人 腕を組んでた 彼女は私の大切な友達」の歌詞を聴いては毎度毎度、愛情と友情と素直になれない強がりの中で選んだ孤独を物想うのだが、今回のジョイントライブとなった上本町の地にて、道場主が通っていたのは男子校で、はっきり言って友情しかなかった(苦笑)。

 人間は人生の中で卒業・就職・移転を機に、出会いと別れを繰り返す中で、何度となく「Alone」に陥ることもあり得るだろう。そんな時こそ、「もっと素直になれたら… もっと勇気を持てたら…」の念が大切なのだろう。

 この度の震災とは直接関係ないが、これに派生した間接的なトラブルでダンエモンは数日前に危うく職を失いかけた。正直、いい歳した大人が一言の言質を巡ってしょーもない対立に意地を張ったのが原因で、上司の一人が上手くかわしてくれなかったら本当に職を失っていたかもしれなかった(ちなみに給料が下がった(ToT))。
 いつもライブに来る度、周囲が見知らぬ人ばかりでも自分が独りではないことをやんわり実感するのだが、逆に常日頃に自分が「独り」と思いがちになるのもどこかで「素直」さや「勇気」を忘れているからではないか?と言うことを考えさせられた一時でもあった。まさに真の「素直」さや「勇気」が求められている時ゆえに。

16.TOMORROW
簡易感想 いよいよ最後の曲となった。今回はアンコールが無かったのでこれが最後の曲となった。
 この曲も弾き語りで歌われたのだが、この曲がトリとなったライブは2000RISEツアー、11月に参加したアコースティックライブに続き、三度目であった。

 ダンエモンが参加したライブではないが、前年真夜さんは宮城県女川町でライブを行っており、その女川町もこの度の震災で壊滅的な被害を受け、涙にくれる真夜さんを逆に励ましたのが、この「TOMORROW」を合唱する女川町の人たちだった

 真夜さんのデビューは阪神大震災から約4ヶ月後の事で、その年は世を震撼させた出来事が多かった故にデビュー曲「TOMORROW」は177万枚売れる大ヒットを記録し、現在では200万枚を越えている。期せずして、震災に打ちひしがれた人々に勇気を与えたこの曲が歴史とライブを重ねて、この度の東日本大震災に打ちひしがれた人々に勇気を与えたのであった。
 真夜さんがこれを知ったのはライブ直前の何日か前の事だったのだが、真夜さんならずとも、この現象に想う所のないファンはいないだろう。


 女川町から700km を隔てた大阪の地にて、合唱する声が一人でも多くの被災者と、それを支援する人々の活力になることが願われてならないとともに、デビュー曲としてのステータスを越えた「TOMORROW」の偉大さもまた実感した瞬間だった。

 立ちあがれ!東日本!

 復興せよ!日本!

 偉大にして、永遠なれ、「TOMORROW」!!


所感 様々な想いを経て参加し、色々複雑な想いも交錯したジョイントライブだったが、まずは参加出来て良かったと思った。

 勿論、この様な複雑な想いを抱く原因となった東日本大震災など起きて欲しくなかったのだが、今は様々な人々の強き想いが復興の支えにならんことを祈るのみで、それしかできない自分が歯痒くて仕方なかったが、それでも何かが出来ると信じたいものである。

 そしてこの日、ライブの終了後に義捐金が募られ、この日集まった義援金は赤十字社を通じて被災地に贈られることになったのだが、何と、義捐金箱の側には真夜さん自らが立ち、義捐金を収める人達一人一人と握手を交わして行ったのだった。

 勿論ダンエモンもその列に並び、決して多いとは言えない額を募金箱に納め、真夜さんと握手を−前年8月のイオンモールフリーライブ以来7ヶ月ぶりに握手を交わしたのだが、正直、震災が起きなければこういう募金はなく、握手もなかったかと思うと、思い切り複雑だった。
 勿論、握手は握手で嬉しかったので、自分の気持ちを偽る気持は更々ないのだが、震災を無かったことにすることで握手が無かったことになるならそれはそれでいいとも思うので、そこに複雑な想いがあるのも偽りたくはない。
 はっきり言って、未曾有の震災に何が出来るか分からないが、義捐金にしても、握手にしても、温かい一声にしても、今はそれが互いの活力となることを信じて頑張るのみである。


 

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平成二三(2011)年一〇月一四日 最終更新