真夜中のホイッスル

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 SHIMIZU SHUNNYA 
解説 アルバム『PRESENTs』の第1曲目。このアルバム以降摩季ソングには男の立場で歌われる曲が多くなるのだが、この曲もその一つ。
 この曲の内容を一言で表現するなら「横恋慕」である。そして主人公とその想い人は「友達」という位置にいる分そこそこ近い距離にいると思われる、ダンエモンの場合と違って(苦笑)。
 流れとして注目したいのは、主人公はまだその想いを相手に伝えていないと見える。そしてそれなりの長期戦を想定しているのも恐らくは相手がそのまた相手とうまくいっていない(「アイツといる時の君は 無理に大人顔してSensitive」という歌詞から彼女の方が不利)様であるから、そこそこの希望を抱けるのだと思う。
ダンエモンも毎回横恋慕の際には長期戦を想定するのだが、結局相手が別れそうにないので当てのない長期戦に途中でダウンしてしまう(泣)。
まあ……個人のことは置いといて、やはりこの歌に関しても静かな調べの摩季ソングに多い芯の強さが注目される。「時間は気にしないで 心隠すその笑顔 誰にも渡さない」「いつの日か好きになる 君を守るのは僕だと 気づくその日が来る」、といった歌詞がそのいを雄弁に物語っているわけだが、加えて注目したいのはこの主人公の持つ包容力である。「ありのままの君でいい わがままを受けとめるのも 大事なカリキュラム」という歌詞にその包容力が見られる。
 「すべてを受けとめる。」というのは概念的に万人が望みながら、その実まず不可能な話である。「すべて」を受け止めようにも、同じ個人の中に矛盾したものを持つことが誰にもあるのだから。その意志を口にするのにはかなりの勇気がいるし、それが後々において足枷になることも充分にあり得る話である。
 もっとも、だからこそ主人公のこの包容力は買いたいし、静かながらも地力としての穏やかな強さはこの曲の魅力となるし、「負け犬ほどタフじゃない」の歌詞にも深い含蓄が出てくる気がする。
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