Back to the 70's

正式タイトル 椎名恵 Live『Back to the 70’s 〜あの頃も私は若かった〜』




日時2012年10月7日(金)18:30開演
場所東京都世田谷区
池尻大橋「Rocker Room」


メンバー椎名恵(Vo)、恩田直幸(Pf)、吉澤秀人(Gt)、井上Cico浩一(Perc)
背景 前年のAutumn Liveから1年振りの参加となった。かつて世田谷区民だったことがあるが、それでも池尻大橋に来たのは生涯でまだ3度目にしかならないことに奇妙な感覚を抱いていた。

 椎名さんは一年前にも同じ場所で『Back to the 70’s 〜あの時私は若かった〜』を開催していていたが、勿論若いから『Back to the 70’s 〜あの頃私は若かった〜』が開催された。
 勿論タイトル通り、1970年代という椎名さんデビュー前の曲も盛り込まれたのだが、1970年代となるとダンエモンは「若い」というより「幼い」という年齢にあり、成人した今でも敬愛するアーティスト以外はどんでもない芸能界音痴なので、さすがに椎名さんの青春時代と自らを重ね辛かったのは否めなかった……………あ…椎名さんも、俺もまだ青春時代真っ只中だったな、そういやあ。何か問題ありますか?ヒヒヒヒヒ……(←ピロキ風)

 居酒屋の隣の入り口に細い階段を降りた先にある地下の会場は程良い大きさで、昨年参加した下北沢440以上に参加者全員が椎名さん達を充分な近さで堪能出来たのは嬉しかった。
近距離で見たバンド一式酒食も堪能


内容
第1部
1.風をあつめて
簡易感想 いきなり知らない曲である(苦笑)。はっぴぃえんどという昭和45(1970)年前後に活躍したバンドは知らなかったが、メンバーの内、作曲家としても名高い細野晴臣氏や、大滝詠一氏なら知っていた。
 ちなみにこの文章を綴っているのは平成26(2014)年4月30日だが、このライブの時点で御存命だった大滝氏は翌平成25(2013)年の年末に亡くなられている。時の流れの無情さを想わずにはいられない。

 レトロな雰囲気の中、「風をあつめて 蒼空を翔けたいんです」の歌詞が繰り返されていたのが聞き取れた以外はこれといった特徴はつかめなかったが、まずは独特の空気を味わいつつ、ライブの本格化に突入するのだった。

2.キャンディ
簡易感想 原田真二氏のヒット曲で、昭和五一(1977)年リリースされた当時、道場主はまだ物心がつくかつかないかで、当時の記憶はないが、様々なナツメロ特集で「キャンディ アイ・ラブ・ユー 目覚めてよ」の歌い出しぐらいは覚えている。ダンエモンが知っているくらいだから相当有名なんだろうな(苦笑)。

 しかしタイトル以上に甘ったるい雰囲気を持ちながら何処か物悲しさを反映させていた。これが70年代カラーなのだろうか。

3.スリーフィンガー
簡易感想  「ワンフィンガーでやるもよし、ツーフィンガーでやるもよし……」ってそりゃ、サン●リー・オ■ルド・ウィスキーのCMか…………「リンリンリリン、リンリンリリンリン」ってそりゃ●ィンガー・ファイ▲か…………ってショーもないボケで誤魔化すくらい、知識にも記憶にも無かった……。

 情けないことにライブ当日の記憶も薄れ、「中学時代の作曲」、「テニス部」というキーワードだけが残っていた……何の為のライブレポートやら(恥)。

4.セクシィ
簡易感想 下田逸郎氏の歌で、「ラブソングの元祖」と呼ばれる程の方らしいが、本当に知らなかった………。
 静かな曲調の中、相手の何気ない仕草に対して度々「セクシィ」と呼び掛けるように繰り返される歌詞が特徴的で、恩田直幸さんが声を重ねた「旅に出るなら夜の飛行機」という歌詞も印象的だった。

5. なぜか上海
簡易感想 さすがに芸能界音痴のダンエモンでも井上陽水氏を知らないなんてことはないが、この曲は知らなかった…・・さっきからこんなんばっかやな(泣笑)。
 昭和54(1979)年という70年代も終わりに近い頃のリリースで、陽水氏の曲の中では代表曲に近いらしく、海の向こうにある「上海」に想いを馳せる歌詞は深みがあって良かったが、さすがにこういう曲を聞くと「WATER CITYが眠る頃」を聴きたいものである(笑)。

6.美しすぎて
簡易感想 フォークグループ・ガロが昭和48(1973)年にリリースした曲で、さすがに記憶を持ち得ない年の曲である。
 歌詞的には過ぎ去った想い出や届かない想いをタイトルにある如く「美しすぎて」と歌っていたようである。
 個人的には過去の思い出を美化する考え方・思い方は好きではないが、ダンエモンの様に醜化する傾向が強いのも問題だな、と思わされた。

7.たどりついたらいつも雨ふり
簡易感想 ザ・モップスが昭和47(1972)年にリリースしたナンバーで、元は超有名フォークソング歌手吉田拓郎氏がかつて所属していたアマチュア・バンドで作った曲。
 氷室京介・大友康平・和田アキ子……他にも錚々たる歌手がカバーしている有名曲らしく、ダンエモンにも辛うじて聴いた記憶があった。どことなくディスコでツイストが大流行しているシチュエーションが漂っている気がした。

 余談だが、タイトルや歌詞にも出て来る「雨」に関連して、椎名さんが「昔・雨女、今・晴れ女」と呼ばれていることを話されていた。

第2部
8.私達のための午後
簡易感想 第2部に入り、椎名ソングがメインとなり、情けない話ではあるが、歌詞が分かることにほっとしていたのが正直なところである。
 だが、季節柄この曲が聴けたことも、前回のオータムライブ同様第2部のトップバッターだったのも嬉しかった!
 再会の嬉しさの余り、聞きながら、独身の分際で「やっぱり秋は一人じゃない方がいいわ」の歌詞にうんうん頷いていたのだから、図々しい話ではあった(苦笑)。

9.ささやかな喜び
簡易感想 大好きな曲の一つだが、その想いは多くのファンと共通しているようで、リクエストが多いことが椎名さんの口から語られていた。
 普段は人と価値観が共通することを好まないダンエモンだが、この曲に関しては椎名さんらしさへの惚れこみが強いため、ファンに好む人が多いのは誠に嬉しかった。
 改めて「生きてゆく事に 速さなんてないから ありのままの 自分でいて 愛も傷みも 長い人生の中では きっとささやかな喜びね」「Rolling days きれいなものを Stayin’ still きれいなんだと 感じられる今が好きよ」「ほんの些細な 出来事さえも今では 喜びに変える事」といった歌詞に、この曲が癒しであり、励みであり、人生の糧であり、タイトル通りの「ささやかな喜び」であることを実感するのだった。

10.メンバー紹介
簡易感想 そしてバンドメンバーは一年前同様、ピアノ・恩田直幸氏、ギター・吉澤秀人氏、パーカッション・井上Cico浩一氏で、彼等との再会も嬉しいものだった(←恩田氏はともかく、吉澤氏・井上氏まで知人の様に捉えている所が図々しい)。

11.始まり
簡易感想 アルバム『Tell me』収録曲の中では「Angel tell me」と並んで「勇気を与えてくれる」と目しているこの曲の登場は予想していなかった分、余計に嬉しかった。

 前々から惚れ込んでいた「どんなに泣き疲れても 愛だけは失くせなかった」という歌詞の「なくせなかった」と自然体で語られる人間の芯の強さが心地良かったのもそうだが、「愛は誰の心にも 息づいているでしょうね あなたのやさしい気持ち 大切にしてゆくから きっと」の歌詞を直に聴いていると、人間性や良心の欠片すら感じさせない凶悪事件や、人の心の痛みを知っていると思えない悪政が後を絶たないような世の中でも、何者の力をもってしても人の心から「愛」を奪えないのではないか?と思わされた。

 少し弱気な物の考え方だが、今後生涯において誰からの愛を得られなかったとしても、自分自身は愛(←異性愛・友愛・親子愛・兄弟愛・師弟愛・人類愛・宗教愛すべてを含む)を忘れずに生きていきたいものである。

12.Love
簡易感想 先の「始まり」「愛」について考えさせられた気持ちを見抜かれたようにこの「Love」が歌われたのが少し恥ずかしかったが、心地良い恥ずかしさだった。

 とにかく「愛」の対象スケールが大きく、広いことに改めて驚かされる。激しい愛や情熱的な愛や若さの勢いに任せた愛では決して持ち得ない強さが「あきらめたり つまずいても つないだ手の中の愛を信じよう」の歌詞を通じて胸中にしみ込んでくる心地はダンエモンの拙い筆致ではとても表現し切れるものではない。
 人は皆連綿と続く愛情の中で生まれ、誰かに愛され、誰かを愛して生涯を終えていくが、あたかも潜在能力の3割しか使いこなせないように、愛情についても本来持ち得ている大きさの何割かしか自覚したり、注いだりすることが出来ていないのではないか?と考えさせられた。

13. 旅の思い出
簡易感想 ここで「旅の思い出」について語られた。椎名さんは「日本丸」という名の船での旅について語っていたが、残念ながらダンエモンは中学校の修学旅行での一泊を除けば船旅の思い出が無い(1時間もしない片道や、クルージングならあるが)。
 ちなみのその旅の間、船内で外国人から英語で質問された椎名さんは答え辛い質問に対して、「Maybe(多分)」で逃げたとのことだった(笑)。実に上手い逃げ方かもしれない、日本語でも使える程(笑)。

14.黄昏のビギン
簡易感想 ライブ定番曲の登場である。さすがに毎回出て来るのでコメントに困るが、今回はタイトル通りに「ビギン」=スタート部分が重視されたとのことだった。

15.いつか空に届いて
簡易感想 椎名さんらしい選曲が嬉しい中、静かな曲が多かったが、ここで一転して広大なライブ会場でも大いに盛り上がれるこの曲が登場した。
 椎名さんにとって、ファンを獲得した曲のジャンル分けに“水9ドラマ”と“ガンダム”があり、この曲は後者として大切な曲とのことだった。
 なかなか夢を抱き難いと言われる昨今だからこそ、「これでいいのと誰もが 無口になってしまうけど」との歌詞で始まったのが、「走り続けて 空に届けば 風になれると 信じてるから」「腕を伸ばして 空に届けば 新しい始まりの時 見えるよ」といった歌詞で盛り上がり、「I never give up forever」「You never give up forever」と締められる……………何度もCDにて聴いたこの曲を初めて直に聴いた喜びがこれほど大きかったのには驚かされ、同時に日常の不安も吹っ飛ぶような心地だった。

16.月のように
簡易感想 比較的新旧によった選曲が多かった中で中盤のアルバム『Cherish』から登場。月見を語るのにいい季節を反映した選曲と言えようか。
 ワンコーラスはアカペラで歌われ、次は普通の演奏下で歌われた。「Silent Moonlight 月のような Silent Moonlight 愛をあげる」の歌詞の清涼感に心地良さを感じつつ、いつか「ガラスの月」「二人の月」も直に聴きたいと思ったものだった。

17.Love is all〜愛を聴かせて
簡易感想 真打ちの登場である。そして以前も幾度かあったように、今回この曲が(アンコール前の)トリを務めた。

 決して音感が良い訳でなく(むしろ音痴で)、僅かな音や楽器の相違など理解し得ないダンエモンだが、さすがにこの曲に関しては椎名さんだけでなく、恩田さん、井上さん、吉澤さんも一段と力が入っているようだった。

 話は逸れるが、この日ダンエモンの体調は決して良くなかった。否、はっきり言って非常に悪く、早朝夜行バスで新宿に就いてから、サウナに直行した後、午後4時近くまでサウナから動けず寝込んでいたので、ライブ以外の時間は寝ていたいぐらいだった。しかし「Love is all 愛だけは越えられるすべてのものを 真実の愛ならば眠らない」を聴き、人生における数々の障害を乗り「越え」る為にも、「眠」っている場合じゃない気にさせられた。

〜Encore〜 親愛なる君へ
簡易感想 この曲は会場オーナーへの感謝として歌われた。恥かしい話だが、歌詞を把握し切れなかったこともあるし、椎名さんの想いに野暮を挟まない為にも、簡易感想は見送りたい。

所感 前回、5年振りの再会に興奮し切って椎名さんとのツーショット写真を撮ったり、久方の振りの対面をアピールしまくったりしたのが少し恥ずかしかったので、その辺りは(体調の悪さもあって)控え目にし、その分、料理を楽しんだ。
 事前告知されていたが、この日、第1部と第2部の間の休憩時に椎名さんの手料理が振る舞われたのである

貴重な椎名さんの手料理


 ライブの表題でもあった70年代の曲が無知に近かった分、充分に堪能出来なかった残念さはあったが、ライブの度に様々な形式や試みに凝る椎名さんの心遣いに深く感謝する次第だった。


 

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平成二六(2014)年五月一四日 最終更新