メモリー・オブ・ユー
解説 椎名恵さんが「竹中ゆかり」の名で参加しているアルバム『エリア88』の4曲目に収録。椎名ソングによく見られる、失った恋を惜しむ曲である。
歌詞の中にある「大地」、「蜃気楼」、「砂漠」といった歌詞が、なくした恋の思い出を胸に描きながら心の中でさまよう主人公の姿と相俟っているのが絶妙である。
歌詞全体を通して見るに、恐らく主人公は「君」とはかなり強がって別れたか、あるいは別れる時にはそれほどの喪失感を感じてなかったと見える。「会いたくないと つぶやいても」の歌詞とそれに続く「遠くで君が 悲しげに笑ってる」の歌詞から、主人公が今尚強がろうとしつつもそれが無駄であることを悟っているのが伺える。
主人公の意志ははっきりしている。やり直したいのである。それを示す歌詞は豊富で「耳鳴りの中 かすかな愛が 泣いた」、「想い出は ひとつふたつ こぼれ落ちる」、「悪い夢から 醒めるだろうか 二人」等が挙げられる。無論、そもそも悔やむ気持ちがないなら思い出しもしないから歌にもならない(笑)。
個人的に注目したい歌詞は「未来へ帰りたい」である。国語的に考えるならこれは相当おかしな歌詞である。まだ来ていない「未来」に「帰りたい」と言うのだから。勿論主人公はドラ●もんではない(笑)。
しかしながら、この一見矛盾する歌詞は案外すんなりと受け入れられそうな気がする。念の為解説すると、主人公は決して戻らぬ過去より、これから訪れる「未来」に「二人」の将来を期しているのである。そしてその「未来」に「綺麗と素直に 言えた日」の再来を望むからまだ来ていない筈なのに「帰りたい」となるのであろう。
過去と未来を比べれば勿論大切なのは未来である。しかしながら、過去から現在があって未来に続くと言う理を無視しては決して良き未来は訪れないだろう。過去を振りかえらない、過去の栄光にしがみ付かない強さも大切だが、取り戻せる過去ならそれを取り戻したい自分を偽らない潔さもまた大切とダンエモンは考える。
恵の間へ戻る