右へきったウインカー

         作詞 椎名恵 作曲 椎名恵 編曲 樫原伸彦
解説 椎名恵さんの6thアルバム『C'est la vie』の3番目に収録。一言でいえば別れの曲だが、その背景は些か不可解である。
 冷めてしまったがために別れを決意する、或いは別れた方がいいのでは?と考える椎名ソングは多いのだが、この曲の場合互いに未練がない。「別れていく理由なんて 特別ない気がした ただ変わらない毎日を 終わらせたかった」―付き合った事すらないダンエモンには不可解である。
 勿論別れにも様々な形がある。が、この歌の歌詞には別れ特有の後悔が殆ど見られない。「Oh Return to me あの時私が 見失ってしまった愛 You were gone away 最後までどうして 気づけずにいたの」の歌詞にその意が見られなくもないが、うがった物の見方をすれば最初から突き合わなければ互いに別の幸せがつかめた、みたいに見える。まあ、恐らくは順当にマンネリ化から抜けられなかった恋愛の方法に間違いがなかったのか自省しているのであろう。
 もう一つわからないのが「電話BOXの中 最後のKissをいつもより 長く交わしたわ」である。別れに殆ど迷いがないのにこの「最後のKiss」だけは随分未練が感じられる。キスする場所といい(車があるのに)、妙に淡白な二人の関係といい、非難を浴びる事を承知で書けばこの二人をくっつけていたのは男女の性欲か?という気すらする(※カミソリは間に合ってます)。
 「あなたは左へ私は右へ」と別々に「ウィンカー」をきって互いに背を向けた以上はジメジメとした露の陰鬱もふっ飛ばして「見失ってしまった愛」「かすかに見えた幸せ」を逃さぬ人生を送って欲しいものである。


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