南風に乗って

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 AKIRA NISHIHIRA
解説 大黒摩季さんのアルバム『HAPPINESS』の6曲目に収録。似た曲の一つに「太陽をつかまえに行こう」が挙げられるが、この曲の方が明るさにおいては強くないが、軽やかさが心地いい。
 背景を解説すると主人公は失恋直後で、「南風」が吹く場―歌詞中の言葉を借りるなら「抜けるような空と 青い海」―で、時は明らかに夏である。心地良い空と海と風に癒しとエネルギーを求める姿は「空」「Summer Breeze」と言った摩季ソングが持つエッセンスとも共通するものがある。
 背景と共に注目したいのは「南風」に乗るためにやってきた夏の海を形容する豊富な描写で、「希望の空」「抜けるような空と 青い海」「煌く飛沫」等がそれだが、魅惑的且つ解放的な夏への描写が豊富な分、失恋からの立ち直りへの力強さを欠いていることが惜しまれる。
 もっとも、「気の合う仲間とNew Face レンタカーでGroovy Live」という歌詞から海へは気心知れたた友達と新たに知り合う友達とがいるのは明らかで、「時々 寂しい顔してもThroughしてくれる Friendship」という気遣いにも、先の失恋と距離を置こうとする仲間たちの心遣いがあるわけだから過去にこだわる歌詞が多いのは望ましくないかもしれない。
 その一方で、「Right guy"初めて"に気を遣う 君 見てると ちょっと悪いから Im Fine!サービスSmileしてみただけで そんな嬉しそうな顔して・・・」という茶目っ気もある事から主人公はある程度は心の余裕を取り戻しているだろうから、「"恋に敗れたときは 新しい恋で癒すしかない" わかってる でも急にそんな 切り替えられない でも・・・」という不安も思いきって払拭して欲しい所ではある。
 最後に注目したいのは心の持ちようと場所の関係である。心情が場の空気を変える様に、場を選ぶ事で心情もまた変る。それを上手く利用して元気と濃いの喜びを取り戻そうという意を端的に表しているのが「風向き変えたいなら Fu〜uh〜 風が吹く場所に行かなきゃ」であろう。
 過去は変えられないし、かといって過去と未来を容易く切り換えれない時も多い。だからこそ「アイスクリーム」「ソーダ」「パラセイリング」といった無機物に夢中になる時も大切にしたいものである。そこから生まれる新たな期待とともに。


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