未送信の恋

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 十川ともじ

解説 岡本真夜さんの5htミニアルバム『Love Story』に3曲目に収録。何とも悲しい一曲である。
 タイトルにある「未送信の恋」とは「未送信のまま」にせざるを得ない片想いである。過去に横恋慕を繰り返した道場主は思い切りこの曲の主人公に同情している。

 冒頭の「友達以上でも恋人にはなれない」からして、主人公が「あなた」と恋仲ではなく、続く歌詞からも「あなた」には主人公が「素敵な人」と認める程の「彼女」がいて、主人公の想いは「言葉にしたら きっともう会えない・・・」という予想から告げられずにいる。
 そんな辛い恋を止めんとして、「これ以上あなたを好きになりたくない」とか、「会わないことで止められるかな」とか、自らに言い聞かせる歌詞も見られるが、叶わぬ恋への苦しみから逃れん為に発しているだけで、はっきり云ってこれらの言葉は偽りである。
 「今すぐ忘れることもしたくなくて」「つらくなるくらいに 心が傾いていくのがわかる」「もう少しだけ好きでいさせて」と云った歌詞に本音は明らかに表れている。

 前述した様に主人公の苦しい気持ちは痛い程分かる。
 まず主人公は告白=想いを「送信」することで今の関係が壊れ、「きっと会えない」を最も恐れている。結果が良かれ悪しかれ、想いを伝えたら決してそれ以前の関係には戻れないことは経験上、ダンエモンにも分かる。勿論勝算があれば苦労は要らないどころか、戦意満々に突撃出来るが、勝算なき状態ではそれまでの関係が崩壊する事さえ案じられる。恥ずかしながら道場主は告白―勿論勝算は皆無だった―したことで相手と会話が出来ない関係になってしまったことすらある。

 歌詞から、「あなた」は、「閉ざしてた心」「ほどいて」くれるような「優しい人」だから、恐らくはその(間違った)優しさから「軽い冗談でも 「好きだよ」なんて」云ってしまった面もあったのだろう。
 だが、「優しい人」であっても、「彼女」が本命であることは不動で、主人公が想いを伝えれば、躊躇うことなく「彼女」を重んじ、主人公を完全に遠ざける事すら辞さない人物と思われる。
 それゆえ主人公は「伝えたい想いは未送信のまま」、「溢れそうな想いは未送信のまま」で、「苦しくなるだけで行き場のない恋」なのを承知の上で、「同情でもいいから そばにいてほしい・・・なんて苦しくなるだけの歪んでる想い」という「Alone」を彷彿とさせつつ、きっばり「同情」を拒んだ同曲とは真逆の想いをこの歌では歌っている。それが正当ではないことを百も承知の上で………。

 自慢じゃないが、道場主は惚れて告白しなかった例しがない。そして恋の多くは横恋慕だったこともあって勝算が無きに等しかったことが多く、告白する度にそれまでの関係が崩壊することを覚悟して当たった。
 結果、かつての想い人の半数は顔を合わせても話し掛けられない(残りの半数はまだ普通に話せる)。それゆえ「未送信のまま」にしてしまう、せざるを得ない気持ちもわかるし、同時に中途半端に近くにいて想いを押し殺し続ける辛さから脱却したい気持ちも分かるし、実際そうしてきた。
 想いを伝えることで関係が壊れるリスクがあっても、想いは伝えないと望む結果が決して得られない事もまた事実である。主人公も想いを「送信」したくて堪らないことだろう。

 「会えなくなるリスクを冒してでも想いを伝える」か?「リスクを回避して叶わぬ思いを秘したまま近くに居続ける」か?
 実に重く、究極の選択かも知れないが、多くの場合は決着を求めてしまう気がする。この曲からも、「Alone」からも、「同情」は解決にならないことも痛感する故に。


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令和五(2023)年一月九日 最終更新