求める未来が変わった

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『DA・DA・DA』の6番目に収録。数ある別れの曲の中にあってこの曲は異彩を放っている。
 突然だが、この曲は白泉者文庫の『パタリロ!』選集8巻「待ってます」を彷彿とさせた。
 この話の中でマライヒは夢の中で愛人バンコランに別れを切り出される。勿論マライヒは問い質した。バンコランは背後にある大木の下で佇む美少年を一瞥し、「おまえは強い。一人でも大丈夫だ。しかしあの子には…。」と言ってマライヒのもとを去った。
 彼を追おうとしてマライヒは「僕だってあなたがいないと生きては…。」と言って泣き崩れた。そこでマライヒは目覚めるのだが、その夢は不安となってマライヒにバンコランの行動を追わせた。
 以上がそのストーリーの下りだが、まさに歌詞の「『君は独りで大丈夫だから……。』I'm in blue」に合致する。勿論捨てられる側はたまったもんじゃないだろう。
 先のマライヒの台詞や「Stay with me baby」「あなたなしじゃ生きて行けない」の歌詞じゃないが弱さを訴えたくなる。
 歌詞の魅力より男としての在り様を考えさせられてしまう歌である(苦笑)。考えてみれば羨ましい野郎だ。そこまで女性に必要とされるとは(立場は辛いだろうが)。
 歌詞全体としてこのカップルには兄と妹のような雰囲気の関係とうかがえる。「出会った頃の私は 知りたがり 甘えたがり 叱られて 愛を確かめ 心配で 引き寄せた」の歌詞を見ると彼氏の存在は保護者的ですらある。
 だが勿論恋愛関係はいつまでもそう云うものではないのだろう。だからこそ先の歌詞の直後に「季節を越えて 大人と呼ばれ」の歌詞で時間の経過を示し、タイトルでもある、「求める未来が変わった」へと続くプロセスが興味深い。
 最後に批判的なことを書くとこの歌の主人公には本音に忠実であって欲しかった。。「海のように 風のように あなたごと 抱き締めたかった」「忘れたい 忘れられない あなたの声が」といった歌詞に本当はどうしたいのかの気持ちを歌いながら、「夢を追う 少年は 眩しすぎて 止められやしない」「振り向かない 追いかけないわ 悔やみたくないから」といって自分の気持ちより彼氏の気持ちを立ててしまっている。
 結果として自分より彼氏を優先することが彼氏に「『独りで大丈夫だから』」と受け止められたのはいささか皮肉ですらある。強さと弱さのアンバランスの生んだ悲劇である。<
 要らん所で強くて肝心なところで弱かった女性の心―男としてそのような気持を見抜けない男にはなりたくないものである(見抜けないからずっと独り者のような気がするが…)。

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