もう愛し合えない

         作詞 椎名恵 作曲 椎名恵 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんの8thアルバム『Because of the rain』の5曲目に収録。惜別の曲である。
 別れを決意したり、悔いたり、失くした恋を振り返る曲は椎名ソングには多いが、別れその時をリアルタイムで描く曲は珍しい。では「最後の時の中」「二人」について解説したい。
 いきなり身も蓋もないことを書くと「二人」の間にある絶望感は聞いていてこっちまで辛くなる。恐らく互いに嫌いになったわけでもなく、「ゆきすぎ」ゆえに二人の間に生まれてしまった違和感が拭えず、別れを決意したように思われる。だから「無理に作る笑顔が 悲しくなるわ」という歌詞が出てくるのだろう。
 恋愛経験ゼロのダンエモンには分かり辛い。本当に二人はやり直せないのだろうか?「せめて最後にもう一度 名前呼んでよ」とあり、「どんなに泣いても叫んでも」という考えが心の片隅にある以上、未練も執着もあるはずである。
 そこで注目したい歌詞が「もしも別れるなら きれいになんて 笑い合ってた日々 今は見えない」である。恐らくそんな例え話をしていた頃の二人は別れるなんて事は微塵も考えていなかったのだろう。故にその「別れる」が現実になった時に冗談とのギャップに苦しんでいる。
 はっきり言ってダンエモンは「きれいな別れ」というものを信じていない。突っ込んで言えば「きれいに別れられる」=「初めから愛し合っていなかった」との図式で考えている。でなければ冷め切ってから別れまでの時間が極端に長いかである。
 もちろん互いが納得づくで別れる事もあるだろう。しかしそこに何の苦しみもないなんて別の意味で悲し過ぎる。少なくともダンエモンは失う事を惜しみもしないそんな軽い愛情で恋愛に臨んだ事は一度もない。
 恋愛はしたいが、恋愛ごっこなど真っ平御免である!実際のところこの曲の主人公も別れを悲しみ、「ゆきすぎ」を悔い、最後に見つめあったり、名前を呼ぶことに未練を見せている。「同じ夢を 追いかけているだけで 幸せだった」時には戻れないだろうけれど、二人が恋人同士となる事を決意した理由を明確に覚えているなら何とかよりを戻して欲しいと願われてならない。
 愛情に限らず、信頼や尊敬のように一度崩れたらまず元には戻らないものは多い。その現実をこの歌から学ぶと共に、こんな未練を引きずりながら別れる事の内容に、相手や未来に過剰な期待や理想を要求する現実無視の恋愛は慎みたいものである。待っているのが「もう愛し合えない」の概念では余りにも悲し過ぎる。


恵の間へ戻る