泣かないでよ

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 12番目のシングル「泣かないでよ」のカップリング曲である。その感想を一言で云うと「身につまされる。」である(苦笑)。
 親の期待に添った生き方が出来ない主人公が、それまでの生き方を改める訳ではないにしても、気持ちを新たに全力で頑張って生きていくことを誓う歌詞になっている。

 どうもこの歌の歌詞には学歴社会や常識社会に対する皮肉というか、当て付けじみたものを感じる。「日本の教育は素晴らしいね ずっとこのままじゃいけないと どこからともなく聞こえてくるから苦しくなる」「何につけても数字で評価されて 家庭のルーツまで掘り起こされるの それで何がわかるんだろう」といった歌詞にその気持ちが表れている。
 この曲を聴くとどうしてもダンエモンは自分自身の身の上を振り返ってしまう。両親から決して裕福とは云えぬ家庭に育ちながら教育に金をかけさせ、高校も大学も私立、浪人はするは、高額の教材セットを買ってもらっておきながら塾通いするし、家庭教師まで付けさせておきながら、その高学歴を全く活かさず、遠くにあって孝養も尽くさず、三流サラリーマン人生を歩み、出世はおろか結婚の見込みさえなく、挙句には自活ならず帰郷していまは穀潰し(あっ!物の表現でちゃんと働いてはいますよ!)―とても顔向け出来ない人生である。
 菜根道に精進しようとする姿勢が誤っているとは毛頭思わないが、天・地・人に何の益を為しているでもない。だが、勿論このままで人生を終える気は毛頭ない。覇気や気力までは死んでも失わない。根拠も勝算もないが、親には「泣かないでよ」と云いたくはなる。

 個人の反省(?)は置いておいて、この曲の核心に迫ろう。学歴や常識に囚われまいとする主人公は何に気力を求めているか、というと、「お日様」「爽やかな青空」と云った自然にある。人工の物には負けまいとする意志の表れだろうか?
 そして自然の如く素直な心で今後に向き合おうとする姿勢が最後の盛り上がりの、「別に立派な所に入れなくても 立派には生きれる 人に優しく 自分に厳しくだっけ 思い出したよ 教えてくれてありがとう」「そんな愛情くれると出て行けなくなる たとえ苦しくても 死ぬ気で頑張るから 夢 叶うように 誰より信じていて」といった歌詞に親への感謝と誓いの意として表れているのが秀逸である。
 だが、摩季ネェは2000年3月に最愛の父上を、次いで2022年11月16日に離婚後の生活を共にし、介護を続けた母上を失った………。
 こう考えるとこの曲に対する心情的な接し方も些か変わってしまうが、ダンエモン自身の問題としては今は亡き父親(2014年12月没)と残された母親が泣かずに済む人生に邁進したい。

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令和四(2022)年六月三日 最終更新