涙の代わりに 〜X'mas in Snowflakes〜

         作詞 咲弥・椎名恵 作曲 羽場仁志 編曲 Hiro
 解説 music39.comの「ミュージック・グランプリ」から作詞でグランプリを受賞された2名の方々と椎名恵さんのコラボレーションCD「涙の代わりに 〜X'mas in Snowflakes〜」のA面に収録。
 同じクリスマスを舞台とした曲でも「X'masには花束を抱えて」とはとても対照的である。前者が「陽」ならこの曲は「陰」である。両曲とも然るべき相手である「あなた」がいながらそこにある熱さは正反対である。
 この曲の根底にある基本コンセプトは「未練」と言えるだろう。主人公が夢想しているのは今現在の「背中ばかり見てる」眼前の「あなた」ではなく、「失くしたときめき」「暖め合う Merry X'mas」という風に過去のものであり、現状は「言い訳も忘れて」の状態で、「冷えきった恋から 今は ただ逃げ出したいだけ」という誠に悲壮感漂うものである。
 時期的に「今年初めての 雪が舞い始める」頃だから、恐らくは間だクリスマスを迎えておらず、一年前には幸せなクリスマスを過ごしたのだろう。その意味においても、前年一人、現在幸せの流れを持つ「X'masには花束を抱えて」と対照的である。なまじ一人ではないだけにそこに心通い合う温もりがないことがかえって辛さを増しているのだろう。
 個人的に注目したい歌詞は「もう一度その腕に しがみつけたのなら 何かが変わる はずだけど」の歌詞である。どちらが先に冷めたのかはわからないが、行動に出れば現状が改善される、最悪でも何かの転機が見込まれる、としながら主人公はこの後「逃げ出したい」としている。
 なにがしかの行動に出れば状況が動く事を理解できるのに、動けない、という事は実は結構世の中に多い。椎名さんのファースト・アルバムを彷彿とさせる「Miss You」という歌詞の連呼にも、降り続く「雪」にタイトル通り「涙の代わり」を託す姿にも主人公が悲しんでいる事が明らかなのに結局主人公は何の行動も起こそうとしない。何故か?
 独断と偏見による憶測でしかないのだが、主人公が愛しているのは「思い出」の中の「あなた」であって、それは今では「白く霞」んでいる。そしてその中にあった「X'mas」「もうやってこない」としている。諦観溢れる歌詞は本来ダンエモンの気に入らない所ではあるが、過去と現在の狭間で苦悩し、流す「涙」「雪」に例えた姿を敢えて反面教師として聞き手に訴える椎名さんの意図、と受けとめるのはうがった物の見方だろうか?


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