虹ヲコエテ

虹ヲコエテ

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 摩季ネェが約1年半の充電を経て再出発を切った記念すべきマキシシングル第1弾。初出は彼女の故郷札幌で2001年6月2日に行われた復活ライブで、8月の発売後も街中で頻繁に流されたのも記憶も懐かしい。
 いきなり話が逸れるが、古来より「虹」は綺麗な姿を見せつつも遠くにありて手に触れられないことから「夢」の象徴として比喩に使われ、様々な歌にも歌われてきた。

 「虹ヲコエテ」とは夢に到達するだけに留まらず、更にその先を目指して進む姿を歌っているのではないかとダンエモンは考える。
 始まりこそ「このままひとりで生きて行く」「確かに怯えていた」「夢は少しだけ欠けてしまった」といった淋しい状態から始まっているが、並々ならぬ決意から選んだ道を歩んでいることが、「未来は 輝いてるよね きっと」「自分らしく 誇らしく」「間違ってたとしても たどり着くよ」、といった歌詞からもうかがえる。
 ファンが復活する摩季に待っていたスタイルとも言えるだろう。

 この歌の歌詞でダンエモンが特に注目しているのは二つ。
 まず一つ目は「波ヲコエテ 何処へ行くの 私達の未来は 輝いてるよね きっとふたつ…」である。冒頭の歌詞からも主人公が恋人と別れてスタートしているのは一目瞭然だが、一応の整理もついているみたいで、直前の歌詞にも「今は「会いたい」って言える」と歌っているように、主人公は今尚何らかの形で恋人を思いやっている心が「私の未来」「きっとふたつとなっているのを見逃せない。
 もう一つは、同じ風に考えているファンも多いと思うが、「ガンバッテ生きてるのは何故?それさえも わからなくなってしまいそうな世の中で 明日は待っている あなたのためにも 自分らしく 誇らしく いたいね」である。
 努力しても努力しても実りを得れず、打ちのめされている人は多い。努力するのも大きな夢に向かって努力している人もいれば、止むを得ない事情に追い込まれ、そこから脱出する為に努力している人や、極普通のことさえままならず何とか当たり前の状態にし様と頑張っている人もいる。
 そんな努力を求められている人達は、謂わば、「何故?」以前の問題で戦っている訳で、それさえもままならないとなるとうんざりする気持ちには計り知れないものがある。

 回りくどく書いたが、云い換えれば、「何故こんな目に遭わなければいけないのか?」という気持ちで日々もがいている人の心境を「ガンバッテ生きてるのは何故?それさえも わからなくなってしまいそうな世の中で」が代弁していると思う。
 そしてそんな八方塞な人間にも「明日」は必ずやって来る。万人に例外なく。謂わば、幸も不幸も100%には予測出来ない未知の世界である。その未知の中で事態は好転するかもしれないし、悪化するかもしれない。そんな未知の世界に対処する時に大切なのは何か?それが「自分らしく 誇らしく」あることだと、この歌は歌っているし、それは摩季ネェの想いでもあると思うし、少なくとも独断だろうが、偏見だろうがダンエモンはそう確信している。

 最後に、上記の歌詞に続けて「さみしくても 苦しくても 間違ってたとしても」という歌詞がある。「間違ってたとしても」「あぁ」にも使われた表現である。再び使われたのは何となく嬉しい。そしてそれだからこそ先の見えない未来―「虹ヲコエ」たところまで頑張れる気がする。そう確信してこの解説を閉めたい。

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令和五(2023)年九月一五日 最終更新