OK

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 武部聡志

解説 摩季ネェの15thアルバム『PHOENIX』の3番目に収録されている。
 アルバム収録以前にもライブで結構歌われており、ふぁんにはまえまえから馴染みのある曲だった。

 歌詞は物凄く単調である。但し、背景は大きい。
 何らかの戦に敗れたと思しき「あなた」に対して、守ってあげたいとも想いに溢れた曲である。繰り返される「Oh〜 『OK』 Oh〜 『All OK!!』」の歌詞から、まず感じるのは「あなた」をありのまま受け入れようという姿勢だが、受け入れようとする相手はかなりの敗北に打ちのめされている。
 「向かい風から 高い理想から 匿ってあげたかった」「その傷も深い挫折も」「あの頃は傷だらけでも」と云った歌詞から、「あなた」はかなり厳しい勝負に挑んでいたと思われる。それが何と戦ってきたものなのかは詳らかではないが、主人公が「見守るうちに同志気分で 一緒に闘ってきたから」という歌詞から、恋ではないのだろう。

 そして恐らく「あなた」は、すべてを一人で抱え込み、すべてを掛けて戦い、敗れたことで多くを失ったと思われる。「誰もあなたを裁けない」とあることからも、成功すれば大きな名声を受けていたものを、敗れたことで人望も失ったと思われる。
 それによる傷つきようは尋常ではない様で、「どんな長い夜にも朝は来る 凍える冬にも春は来る 折れた枝からは新芽が出る 私にも あなたにも 光は降ってくる」の歌詞に見られるように、「長い夜」や「凍える冬」や「折れた枝」に例えられるような苦しみの渦中に在るのだろう。

 そしてそんな傷心の「あなた」に対して、すべてをそのまま受け止め、敗北に対する周囲の風当たりから守らんとする主人公の姿勢に痺れる。
 「一緒に闘ってきたから 諦めさせたくなくて いつだって抱き締めて 向かい風から 高い理想から 匿ってあげたかったけれど」とあることから、元々共に戦ってきた主人公だが、「犠牲とか責任って言葉を 使う度 大人になった気になるけど 与えるばかりが愛じゃない あなたがくれる 平和な毎日も 笑顔と引き換えならば いらない」として、一人戦ってきた「あなた」を一方で讃え、一方で批判し、事後に対して「もしも全てを失くしても 私はあなたを見捨てない 新しい扉 開けて行く その瞬間を 瞳を 見つめていたい」として、再生も共にせんとの意志が、収録アルバム『PHOENIX』=不死鳥と相通じていることと共に。

 殊に「誰もあなたを裁けない 望む未来は奪えない その傷も深い挫折も 私には眩しい勲章なんだよ」「もしも全てを失くしても 私はあなたを見捨てない 新しい扉 開けて行く その瞬間を 瞳を 見つめていたい」の歌詞は、「守りたい!」という想いに溢れ、大袈裟な云い方をすると、世界のすべてを敵に回しても自分だけは味方し、守り続けるという意志が、「ROCK YOU,ROCK ME」「Let’s ☆ GO!! Girls💋」「PHOENIX」とも共通している。
 同様の主旨を歌詞に持つ曲に在って、この「OK」は曲調がどちらかと云えば大人しい目である。だが、単調で大人しい目であるが故に、静かでも、深く根強い想いが感じさせられる。

 冒頭、バックコーラスでも「Everybody is the treasure of the earth. Nobody can judge. Who you are」=「皆、地球の宝物。あなたが何者であろうと誰も裁けない。」としており、個人が個人として生きることの尊さと、その不可侵性が壮大である。

 ダンエモンが摩季ネェに惚れている根幹に、この想い人を何者からも、何としても守らんとの懐深き愛情がある。そんな女性に愛されたい一方で、そんな風に女性を愛し、守りたいことを改めて認識させられた一曲である。


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令和六(2024)年八月一六日 最終更新