想い出にできなくて

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 田辺恵二
解説 シングルCDの8曲目として世に出て、フォースアルバム『Hello』の9曲目、ベストアルバム『My Favorites』の8曲目に収録されている。かつて別れた恋人の誕生日を間近にして過去をなつかしんでいるとも、悔やんでいるとも取れる曲である。
 つい先ほど触れたばかりだが、「あと2日で あなたの誕生日だね 今は もう直接は "おめでとう"言えないけど」と言う歌詞があることや、「離れてから私 恋をしなかったわけじゃない」からそこそこの時間(ダンエモンの偏見で約半年)が流れていることがうかがえる。
 そう考えると「あの夏の海」「誕生日」といった季節や年次的な歌詞の重みが増してくるし、何より「あなたの番号」を今でも覚えていることが未練を引き立たせる。自慢じゃないがダンエモンは十数年前にかけた初恋の人の家の電話番号(現在は引っ越した為別の番号になる)を今でも覚えている(苦笑)し、何度となくかけたその後の片想いの相手の電話番号も覚えている。特に3番目はプッシュホンを押しながら最後の1桁で思い止まった事が何度かあったため、「あなたの番号 最後まで押せなくて 時だけが 過ぎてゆく」の歌詞に変な形で共感した(再度苦笑)。
 真夜ソングを解説するにあたって何度か触れているが、人間他人は偽れても、自己の中にある赤裸々な気持ちは決して偽れない。それを雄弁に物語るのが、クライマックスの「"会わなければ 忘れられる"そう思ってた でも会わなければ 会わない分 募る想い」だろう。別れに至った経緯は不明で、別れる時の心の重さを歌詞から窺い知る術はない。だが、別れの時に「机の奥 しまっている写真も 半分のチケットも」「捨てられずにい」たという事は心のどこかでは「想い出にできな」い事を察知していたに違いないことが推測される。
 この世に生まれて嘘を全くつかずに生きていける人間はまず皆無と思われる。そして自己を偽れないことを心のどこかで気付きつつも自己を偽ろうとする行為もやはり体験せざるをえないときがある。だが逆説的だが、そんな世の中だからこそ自分の気持ちに素直になるときが大切であり、赤裸々な心で向かい合える人間は幸福であるとダンエモンは考える。
 「きっと もう想い出だよね」は推測に過ぎない。ダンエモン個人としては主人公に無理に「想い出に」することなく、「あなたの番号 最後まで 押」して欲しいものである。


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平成二三(2011)年三月八日 最終更新