想うこと……

         作詞 椎名恵 作曲 網倉一也 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんの6thアルバム『C'est la vie』のトリである10曲目に収録されているこの曲は含蓄に富んでいてダンエモンにとっても椎名ソングの中でも特に好きな曲の一曲である。
 数ある椎名ソングにあってもこの曲ほどに強さとやさしさの本当意味に迫る歌はなかなか見られない。ストーリー的に見ると「やさしさは甘い事と 思ってた若い時」とあるように強くあろうとする余り、極論に走っていたことがうかがえるが、それは取りも直さず主人公自身の強くない自分の自覚の裏返しとも言える。
 「たくさんの人達を 傷つけたかもしれない 自分しか見ずにひたすら 走りつづけてきたから」という風に傷つかないため、優しさがなくてもやっていけるために強くあろうとした一方で、「今、孤独も気楽でいいと 口では他人に話すけど 寂しさに勝てない弱さを もてあましてる」とあるように弱さを自覚しつつ他人に対してはそれを認めたくない、という様に強さと弱さの狭間で揺れ動いている点も注目したい。
 だが主人公は苦難の中で確実に成長している。「どちらかが愛していて どちらかが愛されてる お互いが同じ分だけ 愛し合えないのかしら」という歌詞はそれだけを見れば、今頃気づいたのか?言いたくなる様な言葉だが、惚れた弱みを理屈で知りつつそこから脱却できない人間が世の中にごまんといることを考えれば人間の強さ弱さの根底に迫る問題である事がうかがえる。そしてその根底にある苦悩を通して、「流されて時が立てば 愛情も角がとれて 受け止めてみても何にも 傷つかなくなるのものなの?」と考えるようになり、ラストの歌詞に繋がるのである。
 勿論それは「今、誰かを愛する事の 大切さを感じている 孤独きりで生きてゆける程 強くはないわ」と考えて本当の強さと優しさの意味に気づき得た事である。最後に主人公は「これできっと やさしくなれる」としているが、それが真実であるのと同じに「やさしさ」とともに強さも身につけていることであろう。秀逸である。


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