One Room

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 Tetsuji Nishigaki&岡本真夜
解説 岡本真夜にとって結婚・出産後初にして6thアルバム『Dear…』の6曲目に収録。男の立場で歌われたなくした恋を惜しむ曲である。
 数年前の−今以上に嫉妬深い−ダンエモンなら「ざまあみろ」と罵声を浴びせていただろうと思われるようなストーリーになっている(苦笑)。
 背景を解説すると彼女(妻かもしれない)と二人で暮らしていた主人公が「君」をなくして後悔する様を、日常生活の中での慣れない家事や整理整頓がなされず、感覚的に広くなってしまった「One Room」を通じて描いている。
 しかしまあ、「コンビニの袋」「灰皿」「乾燥機の説明書」「冷凍室のいちばん奥」…と本当に「僕」「君」の家事に依存していたんだなあ…と羨ましいと言うより呆れさせられる。「君」に去られてからどれくらいの時間が経っているのか詳細は不明だが、「ベッドの隅で寝る癖がまだぬけない」ことや家事の程度から1週間前後と思われる。生活を供にしてきた者がいなくなると少なからず影響があるが、これだけ思いを馳せる物が多い所に愛情の度合いが窺い知れるのが興味深い。
 個人的には「僕」が失ったものだけでなく、残されたものを通してもまた「君」の存在の大きさを手遅れながら痛感している様に注目したい。根拠となる歌詞は二つ、一つは「君の手紙を 何度も読んだ 愛していると言ってほしかったんだと…」いうところで、恐らく「手紙」は置手紙だろう。些細な気遣いを怠ることの恐ろしさを思い知らされる歌詞である。それぐらい言ってやればよかったものを…と言いたくなる。
 もう一つは「冷凍室のいちばん奥 君が作り置きしてくれた シチューを見つけて動けなかった」である。恐らく主人公は二つの意味で動けなかったのだろう。
 一つは勿論直後に「君はもう ここにいないんだ…」とあるように「作り置き」を必要としている=作ってくれる人がいない、という連想が働いて愕然としているのだろう。
 もう一つは「君」の最後の優しさに触れてそれが最後であることに打ちひしがれているのだろう。
 とにかく喪失感を歌い上げている、という点ではなかなかこの曲の右に出るものは真夜ソングにあっても少ないのではないだろうか?生活臭に根付いた実感の見事さも光っている。
 さて、同性の立場からどうしても批判的な論調が目立つ解説になってしまっているが(苦笑)、この解説の締めにどうしてもこの主人公に最後の批判をしておきたい(←批判していると認めます)。それは主人公が未練を抱くのはいいのだが、それに対して「still I love you」と言いつつ何の行動も起こさず、「ワンルーム」の中である筈のない笑顔を探していることである。「まだ愛してんなら部屋の外へ追いかけに行かんかいっ!「愛してる」の一言で戻ってくるかも知れへんねんぞ!!」と怒鳴りつけてやりたい。


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