One way still No way

作詞椎名恵
作曲恩田直幸
編曲恩田直幸

解説 椎名さんのデビュー30周年を記念してリリースされたアルバム『君と僕をつなぐもの』の3曲目に収録。  同アルバムにて直前に収録されている「ともだち」と同じく失恋を歌ったものだが、勝敗で語ればこの「One way still no way」の方が敗北カラーは色濃かった様である。

 というのも、恋の敗れたことや認めつつも、どこか強がったり、執着したり、過ぎ去った過去を「まぼろし」・「まやかし」と切り捨てたり、と、敗れたからこそのある種の「もがき」が色濃いからであろう。
 それでもこの曲の歌詞に「負け犬の遠吠え」的なものを感じないのは、人間心理を的確につき、偽れない心を示しているからだろう。

 「恋なんてOne way せつないだけね それでもNo way 探してしまう」の歌詞に、恋をしなければ苦しむことも無いのにせずにはいられない想いを共感する人は多いだろうし、「はかないものを追いかけるのは 揺れる心が欲しい からよ」「確かなものに憧れるのは 弱い心が望む からよ」の歌詞にドキリとさせられた方も少なくないことだろう。

詰まる所、現実を捕らえているというところもこの歌詞には大きい。「いい事ばかり 憶えているなんて 過ぎてきた日を 飾りたいだけだからまやかしだわ」「傷つくのに慣れて 不幸を気取るのも それもまた まやかし」等と「まやかし」を連呼しつつも、ラストにある様に、「嘆いていても明日は来る」訳で、生きている限り向かい合わなければならない事柄でもある。

 「One way」であり、「No way」でもあることは確かに人生の苦しみかも知れない。だが、それを乗り越えていつか双方向になることに生きる意義もあることだろう。
 その意義や答えを見つける為にも「One way」「No way」は人生に付きまとっているのかも知れない。


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平成三一(2019)年三月二七日 最終更新