Purple dawn
解説 解説 椎名恵さんの16thアルバム『Tell me』の4曲目に収録されている。椎名ソングによくある別れた後の寂しさを歌った曲だが、チャレンジ精神溢れる収録曲の多い同アルバムにあっては異色とも言える一曲である。
世に別れの寂しさや悲しみを歌う曲はとても多いが、椎名ソングには別れそのものの寂しさより、別れからしばらくの時間を経てから失ったものの大きさにその寂しさの痛感を増大させているものが多い、との傾向がある。
その点を踏まえた上で解説をしたいが、この曲にも「独りになってから」を初めとしてに「抱きしめていて欲しかったのに」とか、「温もりが違う」とか、「ごめんね、知らずに」とか後悔、敢えて悪い言葉で言い換えれば認識の甘さを思い知る歌詞が随所に見られるが、その最たるものは「こんな哀しい夜明けが 来るとは思わなかった」であろう。
タイトルの「Purple dawn」は歌詞中には出てこないが、和訳に当たる言葉が「むらさきの空」、「哀しい夜明け」に表れている。道場主は約二十年前、初めて夜明けを見た時に黎明の空を紫色である、と認識したときの事をこの曲を聴いて思い出した。どこか物悲しい色を背景や舞台に持っていっている所が主人公の心情を見事に代弁しているようで秀逸である。
最後に触れておきたいのは繰り返される歌詞である「とても、好きだったの」の後に続く歌詞で、「あなたを思うと涙がこぼれたわ ずっと、近くに居て」、「いつも助けてくれるヒーローだった」、という言葉がなくした全てに執着している気持ちが溢れていて主人公の心情に拍車をかけている。
そしてそういう比較対象があるから「あなたとのとけるような Kiss 思い出す 口唇そっと腕に押しあてても 温もりが違う」の歌詞が聴けば聴くほど味が増してくる。「温もりが違う」とは恐らくは体温だけの問題じゃないのだろう。愛し、愛される喜びを実感するから体温とは別の「温もり」を感じる、そしてそれでいて「とろけるような Kiss」となる……『Tell me』入手前の「Kiss」の経験のないダンエモンだったら理解できないものだっただろう。
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