Rain

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 西垣哲二&岡本真夜

解説 岡本真夜さんの10thアルバム『Close To You』の9曲目に収録。元々は中森明菜さんに楽曲提供されたもので、正直、楽曲提供を知った時には様々な意味でダンエモンは腰を抜かさんばかりに驚いた(ちなみに明菜さんに提供された時の編曲担当は建部聡志氏)。
 というのも、今日(2012年1月8日)初めて述べるのだが、道場主が生まれて初めてファンになった歌手は中森明菜さんだからであることが大きい。明菜さんの昭和50年代後半から60年代前半にかけて歌われた名曲は今も好きだが、当時の道場主が惚れ込んだ明菜さんのカラーは真夜さんと極めて対照的で、正直、大黒摩季さんと明菜さんの間で楽曲のやり取りはあり得ると想っていたが、まさか真夜さんとの間で成立するとは夢にも思っていなかったから…。

 肝心の歌詞と曲だが、成程、見事なまでに明菜さんのために提供されたものであることに唸らされる。
 30年前に「女歌手なんて皆ぶりっ子。」という偏見を抱いていた道場主は明菜さんの男勝りな迫力が織り成すパワフルさにカルチャーショックに似た衝撃を受けたことを昨日のように覚えている。
 実際、ダンエモンは真の意味で「陰」の魅力を歌いこなせるアーティストは少ないと思っており、デビュー時点での真夜さんには困難なと思っていたので、辛い想いの中に深みと相反する未練と決意を矛盾なく詩と曲にし、尚且つ明菜さんのカラーにジャストフィットさせた見事さにはただ、ただ脱帽するしかなかった。

 ようやく、詞の解説に移るが(苦笑)、詞の内容は降りしきる「雨」の中に涙を隠すような別れの悲しみの中で、新たな季節を迎えてなお気付かされる、失った恋と想い人への忘れられぬ想いが見事な対比と供に綴られている。

 別れの詳細は歌詞からは不明だが、主人公が「あなた」を今も想っているのは明らかである。だが恐らくは叶わない願いなのだろう。1番で「今でも戻って来てくれると 信じてる」と願望を歌いつつ、2番では「優しい言葉など 聞きたくなかった」と拒絶を歌っている。
 殊にサビにおいては「Ah あなたを想う気持ちは 春になっても消えない もう一度会えるのなら 抱きしめてほしい」と繰り返しながら最後の最後で「Ah あなたを想う気持ちは 春が過ぎても消せない もう二度と会えないのなら 突き放してほしかった」と正反対の願いを述べている。勿論根底にあるのは「あなた」への季節を経て消せ得ぬ想いである。

 真に強く、偽れず、消せない想いがあるからこそ、「抱きしめてほしい」と言う想いと、会うことすら叶わないから「突き放してほしかった」という断腸の想いが矛盾することなく、心中に併存するのだろう。
 いずれにしても生半可な想いで抱けるものではない。生半可な想いなら逆にそんな想いから逃げることが出来て苦しまないだろうから。

 そして圧巻なのはそんな想いを集約したと言える、「想い出にしたくない」の歌詞だろう。
 この歌詞に対して、真夜ファンならほぼ例外なく、「想い出にできなくて」を連想するだろうし、コアなファンなら「星空の彼方」「Destiny」との対比を連想するかもしれない。
 いずれにしても強い想いを「想い出」として整理するのは簡単な話ではないということである。

 降りしきる「冷たい雨」が土砂振りか、しとしとと降り注ぐ静か雨かは分からないが、「春」の暖かさと供に今は忘れ得ぬ想いと供に凍りついている主人公の心に雪融けをもたらして欲しいものである。


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平成二四(2012)年一月八日 最終更新