Respect dedicated to Aretha Franklin

作詞 Otis Reding 作曲 Otis Reding  編曲 小島良喜

解説 摩季ネェの14thアルバム『MUSIC MUCSLE』Disc2「RESTING MUSCLE」の12番目に収録されている。摩季ネェが敬愛するアメリカ人シンガーソングライター、アレサ・フランクリンの楽曲をカバーしたものである。
 同アルバムは平成30(2018)12月5日のリリースだが、レコーディング終盤であった同年8月16日にアレサが逝去しており、彼女を追悼する意味で急遽レコーディングされた・勿論13曲目の「(You Make Me Feel Like)A Natural Woman dedicated to Aretha Franklin」も同様である。
 過去作で何度か触れている様に、ダンエモンは本当に洋楽に疎い(というか、敬愛するアーティスト以外は無知に等しい)。ゆえにアレサ・フランクリンについて述べるのは良くても野暮にしかならないので控える。また、摩季ネェの洋楽カバーには原曲の歌詞を道場主の拙い英語能力で訳した歌詞を載せるのが常だが、この曲に関しては摩季ネェによる訳詞がブックレットに掲載されているので、道場主による訳詞は掲載しないことをご了承願いたい。

 さて、肝心の楽曲解説だが、タイトルであり、主人公が「you」に度々求めているものでもある「respect」は英雄やカリスマや偉人に向けるような大袈裟なものでは無い。バックコーラスにて何度も「Just a little bit」 (=ほんのチョットでいいんだから)と呼び掛けられているように、ささやかなもので、どちらかと云えば「日常への感謝」に近いものである。
 そしてそれは主人公にとって、「All I’m asking’ is for」(=私が欲しいもの)で、同時に「What you want」(=あなたが欲しいもの)で、「What you need」(=あなたが必要とするもの)で、既に自分は手に入れているとしている。
 主人公が既得であると云い切れるのも、それが「When you come home」(=帰宅したとき)という僅かな時間で得られるもので、日常の感謝に込められる敬意と云うものがさほど難しくないものであるゆえだろう。

 だが、ここで少し矛盾が生じる。
 主人公は「respect」を既に手にしているとしながら、「Just a little bit」を連呼し、 「R-E-S-P-E-C-T Find out what it means to me R-E-S-P-E-C-T Take care of TCB」(そ・ん・げ・ん 尊厳が私にとって どれほど大切なことか分かって リ・ス・ペ・ク・ト やるべきことはちゃんとやってね)とまでして、くどいぐらいにそれを「you」に求めている。

 想像するに、主人公は「you」が主人公に対する「respect」を持っていることを感じつつも、量的に、曲面的に「足りない」としているのだろう。
 或いは、主人公が「you」に向けている「respect」に対して、「you」が主人公に向けているそれが格段に少ないかだろう。
 「I get tired (Just a little bit) Keep on tryin’ (Just a little bit)」(=頑張るばかりで疲れてしまう)や「You are runnin’ out of fools」(=私みたいな馬鹿はそうはいない)や「find out I’m gone…」(=私、居なくなっちゃうかもよ)とあるように、主人公が現状に不満があり、それが変わらなければいつか愛想尽かしてしまいかねないことは明らかである。

 だが、「you」は恐らくそれに気付いていないのだろう。「respect」を抱きつつも、それをもう少し明らかに示さないといけないことも気づいていないのだろう。加えて、自分が求める「respect」を主人公が感じてくれていることも気づいていていないのだろう。
 日常的に満たされているものへの謝意はついつい忘れがちで、同時にそれを示すことも忘れがちであることはままあることである。だが、そこに鈍感過ぎるといつかそれを失って激しく後悔するのも世の常である。

 「respect」…………それは決して大袈裟なものでも、雲の上にあるものでもなく、日常的にそこら中に存在し、それでいてその有難みを忘れ易く、失えば取り返しがつかないものであることがこの歌に教えられた気がした。


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令和五(2023)年一〇月一九日 最終更新