リベンジ

作詞:大黒摩季 作曲:原田喧太・徳永暁人・大黒摩季 編曲:Rockin' MaMa

解説 摩季ネェの34枚目のシングル曲「Lie,Lie,Lie」のC/W曲。同シングルは平成22(2010)年の無期限活動休止宣言から復帰した際の最初の曲で、デビュー25周年記念第1弾シングルにして、ビーイング復帰後初のシングルでもある。
 アルバムでは14thアルバム『MUSIC MUCSLE』Disc1「FIGHTING MUSCLE」の5番目に収録されている。

 タイトルにあるように、「好きだった人」に対する「リベンジ」=「復讐」に溢れた歌詞になっている。とは云え、相手に報復として危害を加えるタイプの「リベンジ」ではない。
 「まるで洋服着替えるように 気軽に捨てられた日から」とあるから、「ゲンキダシテ」同様に呆気なく、丸で罪悪感を抱かれることなく捨てられたことが伺えるから、復讐心もあるにはあるだろう。だが、結局のところ「好きだった人を嫌いになれない」のが主人公の本音である。
 そんな状況、心情から立ち上がり、相手を見返さんとする流れは「復讐GAME」に通じるものがあるが、「復讐GAME」がデビューシングル「STOP MOTION」のC/W曲であったことを想うと、この「リベンジ」が無期限活動休止宣言から復帰したシングル第1弾の「Lie,Lie,Lie」のC/W曲であることに奇しき共通点を感じる。

 そしてデビューから四半世紀以上を経ているだけあって、心情背景の描写や、過去の想い人をきっぱりと恋愛対象としない意志の強さは「復讐GAME」より更に磨きが掛かっている。
 「ただ『好き』だけで追いかけてた 恋はいつでもイチかバチか あなただけ見つめてた」「私の空から光は消えて 恋に背を向けてきたけど」「好きだった人を嫌いになれない 忘れようとする度 思い出して 哀しくなれば蓋をして 自分で時を止めていたけど」と云った歌詞から、恋を失った際の主人公の苦悩は筆舌に尽くしがたいものだったのが伺える。
 一方で、「すべて染まれば“つまらない”って 自立すれば“俺はいらない”って 別れましょう 私から」「理想を下げた平和は ただのDrift」と云った歌詞から、先に冷めたのは相手でも、別れを決断したのは主人公であるとの可能性も伺える。

 勿論、これらの苦難・苦悩を消化して、マイナスな想いすらもエネルギーとして立ち上がるのが摩季ソングの真骨頂の一つであるのだが、別れから立ち上がるまでの苦悩が半端なかったことや、それすらもエネルギーとしてしまう凄まじさは、さながら6年間の活動休止中の想いが一気に噴出したようでもあった。
 前者を描写した歌詞として、「惨めな過去」「忘れようとする度 思い出して 哀しくなれば蓋をして 自分で時を止めていたけど」等が挙げられるが、如何なる形の別れであれ、やはりそれはそれでショックだったのだろう。
 だが、何時までもそれでうじうじしている自分なんて本当の自分ではないと云う想いがあり、「咲かぬまま散りたくない 変わるなら 今」「終らせちゃお」と云った決意の下、「Burn! Burn! My Fire! Fire! 燃え上れ 後悔もコンプレックスも 燃やせばEnergy」「Come On! Run! Run!! More Faster! Faster! 駆け上がれ 惨めな過去を 一気に追い越して」「ガンガン輝いて咲いて 舞い上がれ」と吠えているのだろう。あたかも、廃棄物でも燃やせば火力発電が出来、排泄物でも肥しとして草木・草花を育てられると訴える様に。

 危害に危害で報復するタイプの「リベンジ」は、ダンエモンは好きではない(そうしたくなったことは人生に何度もあったが)。勿論この曲が歌う「リベンジ」はそういうものではなく、「相手を見返し、(自分を振ったことを)後悔させてやろう。」と云う種のものである。
「リベンジ」の直前の歌詞が「ハイスペックな私で」「艶やかなデバイスで」となっているのもその決意の表れだろう。

 そして最後に注目するのは、立ち上がった際の主人公が失った恋を完全に過去のものにしている点である。結局相手を嫌いにはなれないから、危害を加えるタイプの「リベンジ」はしないし、「再会して 幸せ?と聞かれて 笑顔で頷くの」ということが可能となり、相手も自分も次なる人生のステップを踏めていることを良しとする………それゆえ、「もう二度と愛さない リベンジ」としているのだろう。
 この歌詞の直後には銃声が入っており、「ハイスペックな私で リベンジ」の歌詞でこの曲は締められる訳だが、恐らく銃声は過去の想いに止めを刺し、決別することを意味するのであろう。
 尚、ダンエモンは平成30(2018)年の25周年記念ライブにてこの銃声が轟く際に摩季ネェに指鉄砲を向けられた(笑)。銃声とともに体を仰け反らせたのは云うまでもない(笑)。


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令和四(2022)年六月二一日 最終更新