River

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 建部聡志
解説 アルバム『PRESENTs』の中でダンエモンにとって(その時の気分次第で)1、2、3位を巡る三大巨頭である(後の2曲は「Come To Me,Once Again」「3―Call&1―Mail」)。
 この「River」という曲のRiverは言うまでなく川のことであり、歌詞の中には具体的な存在としての「River」が出てくるし、母なる「海」へ帰ろうとする様が心情の比喩としても使われている。
 少し話は逸れるが、「川」というものが「時の流れ」引いては「人生」に例えられる例は多い。そしてそれは古今東西変わりはない(川の流れとは正反対に)。著名な古典『方丈記』(鴨長明)の冒頭には「行く川の流れは絶えずしてもとの水にあらず…。」と諸行無常を川の流れに例えて語っている。また、いずれ(←いつのことやら)「堀内の間」に追記することになるが、堀内孝雄氏の歌に「川は泣いている」「河」があり、前者は川を過ぎ去った青春の日々に後者は河を人生に例えている、そしてそこには容赦のない時の流れと立ち向かうべき生涯への比喩も含まれている。更に付け加えれば「River」の収録アルバム『PRESENTs』のリリースは2002年12月11日、堀内氏の「河」は2003年4月スタートの「はぐれ刑事純情派」のエンディングとして世に出た。ダンエモンの敬愛する二人のアーティストが(漢字は異なるが)同名の曲を僅か半年足らずの間に世に出したことには某か感じ入るものがある。
 さて、話が逸れまくった(苦笑)。この曲における川は時の流れと共にその流れが過ぎ行く様を過去の悔やみや所業を文字通り「水に流す」様に例えている。
 この歌の魅力には「君の窓の左側 悲しみを流しに行く」と下流へ向かうものがある一方で、「幻の泉を見てみたくて 急流を遡った 冷たさを増す水を掻き 岩礁にしがみついては 身を守ることに必死で 君を忘れた 凍える希望さすって 濡れた後悔かついで 流れ着いた岸辺には River 花が咲いてた River アイリスの華」の様に竜に成らんとして滝を登る鯉や新しい命を産む為に遡上する鮭・鱒の様に試練を乗り越えるが如く上流へ目指す様の双方が見事な対比で語られているところにあるだろう。殊に後者にはその遡上が決して平坦ではなく、諦めた事、挫折した事、敗れた事もあり、それら全てを含めて辿り着いた所にそれこそ「アイリス」の花言葉の如く、「愛・消息・あなたを大切にします・伝言・優雅・恋のメッセージ」といった素晴らしき事物が待っている様が描かれているのが秀逸である。
 この世の中は何かと世知辛い。神仏や正義と言った目に見えない概念的なものを信じるのは容易ではない。だが、「愛」は人間誰しもが一度は包まれるものであり、何者を失おうとも人間が最後にたどり着くところとも「愛」である、と道場主は信じている。そしてその想いは「River 海へ帰ろう River 僕へ帰ろう River 君へ帰ろう」と言った歌詞に触れることで平静の思いを代弁されたような思いに駆られているのが、この曲をして『PRESENTs』中の最高曲の一つである、とダンエモンが考える所以である。
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