寂しかった人へ

         作詞 椎名恵 作曲 和泉常寛 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんの7thアルバム『VOLAGE』の4曲目に収録されているこの曲は一言でいうなら別れの曲である。
 歌詞から背景を類推すると、「あの娘」の存在が別れの原因であることは一目瞭然なのだが、「あの娘のやさしさに 頼った」り、「いつでも辛さから逃げてしま」ったり、と「あなた」はかなり弱い人間で、主人公がそんな「あなた」の弱さを気遣って後腐れのない別れをプロデュースしているわけで、タイトルの「寂しかった人へ」とは裏腹に主人公が寂しい人となっているのが何とも遣り切れない。
 言い訳を封じるのも、「私のことを忘れて」と声をかけるのも相手を気遣ってのことだが、かと言って主人公が強い人間なのかというと一概には言い切れない。
 自らがプロデュースした別れを「余りにきれいな別れね」と皮肉らずにいられないところや、散々「あなた」をこき下ろしながら「幸せになってね」という一番大切な言葉を「最後まで 言えなかった」原因が「私だけ独り残るから」とはっきりさせている所にも主人公が如何に苦しんでいるかがうかがえる。
 「あなた」「寂しかった人」ゆえに「あの娘の優しさ」と主人公の強がりつつも後腐れのない本当の情けに恵まれているのを見るとどうにも遣り切れない。本当にこれで言いのだろうか?確かに「余りにきれいな別れ」は結果論からすると主人公の立ち直りを早めるだろう。しかし「余りにきれい」ゆえの傷を残すことも事実である。「あなた」もいつまでも知らぬが仏でいて欲しくないものである。


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