作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 西平彰
解説 摩季ネェのデジタル・ダウンロード版。同じデルタル・ダウンロードでも「Our Home」の様にCDに収録されてはいない(平成二六(2014)年四月一四日現在)。
この曲が生まれたきっかけは平成一九(2007)年公開の映画『LIFE〜天国で君に逢えたら』である。若くして肝臓癌に倒れた伝説的プロウィンドサーファー飯島夏樹氏の書籍を映画化したもので、後にTBSドラマ『JNN50周年記念 スペシャルドラマ 天国で君に逢えたら』が生まれ、平成二一(2009)年九月二四日にオンエアされた際のオープニング・テーマソングがこの「最後のラブレター」である。
摩季ネェは平成二〇(2008)年リリースのアルバム『POSITIVE SPIRAL』の初回限定版DVDに「〜Dedicated NATSUKI IIJIMA〜」(飯島夏樹に捧ぐ)と副題した「HEAVEN’S WAVES」を収録し、闘病を通じて数々の勇気をくれた故飯島氏を偲んでいる。勿論この曲も飯島氏への想いが溢れているのもそうだが、立場としては未亡人となった飯島寛子さんの想いを代弁したものになっている。
「死」と言う、人間誰しもいつか訪れ、いざ訪れたらどうにもならない事象に対して、「有り触れた風景 今は特別なもの 失うまで気付けない」や「強くなっても ひとりぼっちじゃ意味などないのに」や「帰る場所があったから 遠くまで行けたんだね」といった歌詞が理屈では認識出来ない喪失感を見事に表し過ぎていて泣けてくる。
殊にサビの「時計の針を戻して あなたに出会えたら 瞳 反らさず もう一度愛したい」と「煌めく海の向こうに どれほど願っても 時は絶え間なく ただ過ぎて行くだけ」の歌詞はどうにもならない無力感に打ちひしがれながらそれでも出てくる愛しい想いが半端ない。
それゆえ「もう何も出来ないなら」と無力感を前置きしながらも「溢れる思い」が凄まじい存在感と輝きを放つから、「最後のラブレター」であり、「真実のラブレター」でもあり得るのだろう。
摩季ネェはある番組でこの歌を飯島寛子さんの前で披露し、寛子さんは亡き夏樹氏への想いと摩季ネェへの感謝の狭間にて笑顔で見守っていた。だからダンエモンは寛子さんの悲しみが癒されれば、なんて薄っぺらな事は書かない。
死に別れという、物理や生物学ではどうにもならない事を前にしても色褪せない愛情を貫いて、いつの日か彼岸にて夏樹氏と生前に勝る愛情に溢れた再会をすることを応援したい。
余談 この曲に直接関係ないが、ダンエモンは平成二二(2010)年一月に大人解放クラブに参加した際にこの曲を聴いているが、ライブ参加の2時間ほど前、書店にて俳優の長門裕之氏が前年に亡くした最愛の妻・南田洋子さんへの想い出を綴った本を読んでいて、その中で「行かないでくれ、洋子!神様、今一度時計の針を戻すことはできませんか?」という記述があったのを覚えていた為、胸が塞がれる想いがしたのを昨日の様に覚えている。
そして長門氏はその四ヶ月後の平成二一(2011)年五月二一日に南田さんの後を追うようにこの世を去った………。長門夫婦の享年はそれぞれ77歳と76歳で、早世した飯島氏と同じ様には語れないが、「時計の針」という文言が偶然に一致したことが心に突き刺さるだけに、この夫婦にも飯島夫婦に負けない真実の愛があり、今は供に安らかに眠っていると信じたい次第である。
摩季の間へ戻る 平成二六(2014)年四月一四日 最終更新