サヨナラ
作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 十川知司
解説 岡本真夜さんの6thシングルであるこの曲はアルバムではフォース・アルバム『Hello』の7番目とベスト版アルバム『RISE Ⅰ』の6番目に、デビュー20周年記念アルバム『Mayo Okamoto 20th anniversary ALL TIME BEST〜みんなの頑張るを応援する』の5曲目に収録されている。
ただ、この曲は真夜さんにとって、デビュー前にデビューシングル収録の「TOMMOROW」、そのC/W曲「BLUE STAR」とともにシンガーソングライターの世界に身を投じた初期に作られた曲であり、彼女自身にとっても数ある曲の中でも重要な曲である。
これは真夜さんの口から直接聞いた話で、『Hello』リリース前にも歌われたことのある曲であり、1999魔法のリングにKissをしてツアーではアンコール曲2曲の内の初めの曲として歌われた(ラストは「ANNIVERSARRY」)。
ダンエモンにとって初めての傘下となった同ツアー(横浜、浦安、東京国際フォーラムの3箇所で参加)にてアンコールの手拍子を受けて舞台内に設えられた階段の上で帽子とスカートを纏い直立不動で赤い証明をバックに、そしてこの曲の前奏と供に現れた真夜さんの姿は昨日のことの様にダンエモンの脳裏に焼き付いている(何と云っても初めて参加したライブだったので衝撃は大きかった)。
更に翌年の2000RISEツアーでは黒人ドラマーが素手で叩く太鼓の音を前奏にこの歌が歌われた(大阪厚生年金会館及び日本武道館で確認)。故にダンエモンにとっても印象深い歌である。
歌詞は夢と恋人を天秤にかけた女が夢を選んで別れを決意した内容になっており、自分から独断専行で決行した別れの裏で忘れ得ぬ思い出と別れの辛さが見え隠れしている。これまた真夜ソングによくある矛盾する想いに揺れ動く様が主題になっている。
まず第一に注目したいのは別れを決意せざるを得なかった想いと、別れたくない、再会したいとの想いである。
前者を表す歌詞は「思いきり 笑っていた あの頃には 戻れないの 私が この夢 捨てない限りには」や「夢を追えば追うほどに 遠ざかる背中 つらくて 一緒にいるのに すごく寂しかった」であり、後者は「あなたの顔を見たら きっとね 泣いてしまいそうだった 別れられなかった」と「こんなに泣くぐらいなら 別れなければ よかった」や「ほんとは サヨナラを あなたから言われるのがこわかった」に「後悔してはいないの 結ばれる運命なら もう一度 どこかで 会えると思うから…。」とこれまた誠に豊富である。
第二に注目したいのはその背景である。
日常のささやかな幸せを重視する真夜ソングらしく、そこに異常が見られるようになったことが悲劇の発端である、と捉えている。それを示す歌詞が「その日 うれしかったコト その日 悲しかったコトも 話せなくなった 話さなくなってた」である。動詞の微妙な変化も見落としてはならないだろう。
「夢」という比較対象と明確な理由があるため、数多い別れの曲にあってこの曲は決意の固さと振り切ってきた未練の重厚感が他の追随を許さない。
「サヨナラ」という曲のタイトルにはオフコースの同名の曲を連想する人の方が日本全体では多いと思うが、ダンエモンは一真夜ファンとして、オフコースファンにとっての「サヨナラ」の重さよりも岡本真夜ファンにとっての「サヨナラ」の重さの方が大きいと自負している。
最後に述べたいのは「夢」と恋は必ずしも両立出来ないものと限ったものではないということである。
辛過ぎる別れを決行するだけの行動力ある主人公なら「結ばれる運命」だけに頼ることなく「夢」と「あなた」の両方を掴む欲張りであって欲しいものである。
真夜の間へ戻る 令和六(2024)年五月九日 最終更新