幸せをありがとう

作詞 椎名恵 作曲 佐々木真理 編曲 見良津健雄
解説 椎名恵さんの12thアルバム『Cherish』の6曲目に収録。静かな日常の中にある、愛し合う二人でともにいる事に喜び、そんな喜びを与えてくれる事に感謝する曲である。
 「今夜はANGEL」でデビューした椎名さんのイメージで見ると「週末には彼がいる」「ずっと一緒にいよう」といった曲の持つささやかな日常や二人でいることを喜ぶ、激しさを見せない強さに驚かされる事がしばしばであるが、この曲にも同じ強さがあり、ただ力や体が強い事よりも大切な強さを教えてくれる。
 背景を見ると、何気ない日常の朝に「あなた」より先に早起きし、愛しい人の寝顔を前に、ようやくにして得られた幸せを噛み締め、感謝し、未来へのささやかな決意に想いを馳せているのが何とも心地いい。
 「はしゃぐ顔が子供に戻ってる ひとつ違うあなたを見つけた」「久し振りに晴れたから 公園でも散歩しよう」といった歌詞は日常の一コマ以外の何物でもないのだが、その根底に「静かに溢れる愛」「幸せの意味」があるから「ねぇ」と呼びかけた後に続く、「こんな幸せがあるのね」「幸せをくれて感謝しているの」「ずっと幸せでいよう」「幸せの意味を教えてくれたね」という風に様々な感情・希望・回想があり、それらが「ありがとう」の気持ちで締めくくれるのがこの曲の最大の特色にして魅力だろう。
 下世話な視点だが、世の夫婦で離婚率が最も低いのがこの曲に出てくる主人公と「あなた」のような夫婦ではなかろうか?如何なる興奮も楽しさも刺激も飽きや慣れの来ない物はない。だが日々の暮らしの中に伴う空気の如きフィーリングは普段目立たず、さりとて切り離し様のないものである。そしてそこに取り立てて「口にしない」物でありながらも心にシンクロする幸せがあれば、「好きになって本当に良かったわ 二人とてもいい感じだもの」と思えるのだろう。
 勿論ダンエモン自身、椎名さんに「好きになって本当に良かったわ」と思っている。そして愛する人に「好きになって本当に良かったわ 二人とてもいい感じだもの」と思ってもらえるための責任の大きさも実感している(苦笑)。
 月並みだが、形や一時の感情に頼らない、日常と二人の自然な心の交流の中にある想い合いを以って、「幸せをありがとう」と思える日常が万人のものであれば、世に戦争や凶悪犯罪など怒らないだろうに、と思われてならない。言い換えればそんな幸せを持つ事で憎悪や嫉妬と無縁の日々を送る事も可能、と触れてこの解説を締めたい。


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