信じてる

解説　椎名恵さんの8thアルバム『Because of the rain』の9曲目に収録。憂いの中に強さを持つ曲である。
　主人公は「あなた」との間にいわゆる倦怠期を迎えているのだろう。そしてこの「あなた」と知り合う前に「あなた」の「昔の恋人」と推測される「誰か」＝「きれいな女性」への「あなた」の視線にまで不安を感じるほど自分に自信を持っていない。
　「大切にすると言った　嬉しかった言葉」や「唇のやわらかさ」と言った具体的な証より、「不器用で頼りない」自分や「もう１０日もない」電話、「投げやりな言葉」、に感じる不安につぶされそうな主人公の弱さは上っ面だけを聞いていると、弱気ぶりにいらつくほどである。
　だが、椎名ソングの特徴と言おうか、この不安に対し、「信じてる」、「信じたい」を連呼し、自分に言い聞かせ、実現に向ける様に芯の強さがある。
　勿論心のそこから「あなた」を愛しているからそうしよう、と思うのである。
　そう、不安になることや疑うことなど簡単でいつでも出来るが、それはいざ痛い目にあったときの耐性は身につけれるが、力を生みはしない。
　逆に信じることは辛く、脆いし、裏切られた時の痛みもひどいが、それを承知で、負けまいとして貫く信は力を生む。勿論頼り切りになるのとは違う。
　それを踏まえてダンエモンが注目したいのは「最後の恋になること　心からそう信じてる」である。この「最後の恋」には二重の意志があると思う。
　一つは最後までつまりは結婚か死別の時まで添い遂げんとの意志。そしてもう一つは、仮に切れた時にはもう恋はしない、つまりは背水の陣にせん、との意志である。
　この二重の意味がある、との見方がダンエモンの当てずっぽうに過ぎなかったものだったとしても私は構わない。それだけの勝ちをこの歌から教えられたのは間違いない。
　恋らしい恋をしていないダンエモンだが、最初の恋が「最後の恋」になると「信じたい」ものである、否、信じよう。


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