潮騒

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 SHIMIZU SYUNYA
解説 些か寂しげなこの曲はアルバム『RHYTHM BLACK』の11曲目に収録されている。確かにある種の決別を歌っているのだが、よく歌詞を見るとそれほどの寂しさはない。
 というのも別れの対象が人ではなく、思い出だからである。それを表す歌詞が冒頭の「あなたがずっと好きだった Ash Greenの深い海 こうして一人 振り返るのも 今日でおしまい 最後のさよなら」である。推測するに、「Ash Greenの深い海」は主人公が想い人と逢瀬を重ねた(←古い表現だなby道場主)思い出の場で、別れた後も何度か足を運んだが、新しい恋人もできてそれゆえに一人で来るのが「今日でおしまい 最後のさよなら」となっているのであろう。
 ところで歌詞を追って行くと些か摩季ソングらしくない内容に気付く。「寂しそうで もの言いたげな目が 『不器用な愛に気づいて』 いつもそう言ってたのに 見落としたまま過ごした」「心の扉開けるMaster Key ちらつかせながら 触れさせてはくれなかったね」「追い詰めては傷つけて 跳ね返る感情の強さで 愛を計った夏 潮騒ばかり聞いていた」といった歌詞からは過去を悔やむ歌詞が目立つ。
 勿論他の摩季ソングにも過去を野過ちを悔いるかしがないわけではないのだが、人生のリスタートを切る内容の歌にしては少々未練がましい。推測するに、「恋しくて見えなくて 戸惑いながらぶつかりながら 擦り切れるほどのKissで確かめた 打ち寄せては引き返す 波のように 弾ける泡のように 風と戯れた夏」「お揃いの歯ブラシ 色違いのMug 何度隠されても 懲りずに並べた」といった歌詞からかなりの大恋愛だったと思われる。
 つまり人生のリスタートを切るには明らかに引き摺るに重すぎる思い出なのだろう。だから完全に心の整理をつけるために会えて現地に足を運び、募る思い出を全て自分の中で吐露したのだろう。全く以ってトリの「時が過ぎても忘れられなくて この海にすべて閉じ込めて行くわ 夏の思い出のように 潮騒を風に返して」が雄弁である。
 少々愚痴を述べると整理の必要な思い出を持つ主人公が羨ましいダンエモンである。ふられてばかりのダンエモンにはそんなものはないから…(苦笑)。
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