作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 西平彰
解説 アルバム『POSITIVE SPIRAL』の3曲目に収録されているこの曲は尚、同アルバムの初回特典DVD 収録の「セルフライナーノーツインタビュー」で摩季さんによって、「マイナーで、押せ押せの曲」・「超クラッシック」と評されている。
誤解を恐れず述べれば、この「失意のオーロラ」は同アルバム収録曲の中で1、2を争うくらい曲である。だが、アルバムタイトルに相応しく、何かを目指して進む意志の強さは決して他の曲に劣らない。
摩季さんが「セルフライナーノーツインタビュー」でショパンの「ノクターン」を引用して語っていたように、クラッシクを連想させる曲調の下、「氷の世界を彷徨うように 降り敷く孤独は氷河のように」という出だしで始まる歌詞は国や故郷を追われた民族が安住の地を求めてようで、それは故国ポーランドの独立を祈りながら異郷を彷徨い歩いたショパンの人生と似てもいる。
勿論これは比喩で、結局のところ主人公が語りかけているのは「心醜いものから奪い去」ればいい筈の「翼」が「清く正しいもの」から奪われる、「神様はいないの?」と嘆き、問いたくなる不条理な現世で彷徨者の如く翻弄される愛する人を光溢れる世界に導き出したい意を歌ったものである。
同アルバム収録曲の中で最も短い歌詞でありながら、「あなた」がいかに凍てついた世界にいるかを示す歌詞は、これでもか、という程出てくる。
「氷の世界」、「氷野」、「流れ行く時を止める白夜」、、「終わりなく続く道に荒れる吹雪」、「暴虐の彼方」、とうんざりするほど、逆境また逆境の人生航路である。
だがそんな逆境にあっても主人公は活路を見つける目を曇らせてはいない。
「何にも負けない力」、「羨望の淵かすかな微笑み」、「沸き立つ自由」、「愛のうた」、等が挙げられる訳だが、陰と陽、プラスとマイナス、positiveとnegative、の応酬は本来「闇からあなたを救いたい」と決意する主人公にも容赦なく襲いかかり、「途方に暮れるの」、「あなたを見捨ててしまいたい」といったマイナス思考をももたらしている。
それはまさしく厳寒の夜の世界にカーテンの如き頼りなげに漂いながらも美しい光を放つ「オーロラ」で、「失意」というネガティブな感情をベースにしつつも、決してそれに負けることなく、時に「my all」(=自分のすべて)、時に「the one」(=唯一つの存在)、時に「destiny」(=運命)、時に「chain」(=連鎖)、と意識するする「あなた」とともにあるからこそ、「愛のうた」を歌いながら向かう「未来」を「あなたと信じる」ことができるのだろう。
同じアルバムで直前に収録されている「Groove on〜脱いでごらん〜」同様、心寒い世からの脱却を目指す歌詞がこの曲にもあふれている訳だが、愛する人を誘い出そうとし、リードしているのは共通しつつも、その実、主人公もまた愛する人を想う気持ちを逆境に耐える為の自らの糧としている面がこの曲には色濃いことを述べてこの解説を締めくくりたい。
摩季の間へ戻る 平成二〇(2008)年二月一三日 最終更新