Single girlの決断
解説 椎名恵さんの11thアルバム『Lovers』の4曲目に収録。いつ結婚してもおかしくない状況にある主人公が「あなた」の一言−「プロポーズ」を聞けない為に独身−「Single girl」のまま置かれ続けているもどかしさを歌った曲である。
歌詞が物語る場面は恋人同志のサイクリング中の一コマ。今日も今日とて待ち侘びる「プロポーズ」が「5年」も放置され、「さっきも、またはぐらかされた」という状態にある。
そんな状況にあって主人公は「あなた」vと「風の見える丘」までの「競争」の勝敗に「プロポーズ」を賭けている訳だが、歌詞から類推するに、実際にはそのような「賭」は為されていないと思われる。
つまりはなにがしかの努力が達成された際に、それに付随して幸運を呼びこむんじゃないか?的な期待を持ちたい気持ちが歌われていると見られる。勿論主人公は「競争」という「賭」に勝つことで、戦利品たる「プロポーズ」を期待しているわけで、勝利の地である「風が見える丘」が「競争」のゴールであるとともに二人が恋人同志でいることのゴールにしたい気持ちも同時に表している点が秀逸である。
しかしまあ、「あなた」は主人公の気持ちは解しつつも、期待や思考、不安には全く気づいている様に見えない、ある意味においての脳天気振りには何だかなあ…である。「そんなに本気でペダル 漕ぐところは 子供みたい 負けず嫌い 女の私 相手にして」や「あなたの背中がどんどん離れてく 神様お願い、彼の時間だけを戻して」といった歌詞を見ると、同じ男として、「彼女の待ち侘びる気持ちをチョットは考えてやれよ…。」と言いたくなる(苦笑)。
主人公の「あなたおかげで」、「あなたのせいだわ」と(深刻なものではないにせよ)責める気持ちはもっともである。がしかし、この歌詞も、「やさしい私の我慢も限界」というあたかも最後通告を思わせる歌詞も何とか「プロポーズ」を引き出したいがゆえの「手段」であって「本音」ではあるまい。本気で別れを考えているなら「5年」も待たされた恨みは絶縁状を叩き付けるが如き怒りを含むことだろう。
いずれにせよ主人公の本音ははっきりしている。悩みもジンクスを作る気持ちも全ては「あなた」の「プロポーズ」を引き出さんが為である。「最後の賭をしようじゃない」とあるように、「賭」に勝てば良し、負ければもはや「あなた」から待たずに直接自分から引きずり出す行動に出るのだろう。そしてそれこそが「Single girlの決断」なのだろう。
余談だが、道場主はかつて初恋の人に対して彼女に自分と付き合う意志があるか否かの返答を迫り、玉砕した。はっきり言って、YesかNoかならNoが返されることを、こちらから強引に迫らなければ優しき女性ゆえにとどめを刺される事もなかったであろうことは容易に想像できた。
しかしその優しさに甘えて、歩み寄りのないまま粘着するが如き有り様に耐え切れずに道場主は強引に返答を迫って、決着をつけた。一時的に傷付こうともそれがお互いのためである事は分かり過ぎるくらい分かり切っていた。
結論。良きにつけ、悪しきにつけ、破局を避ける為だけに結論まで避けて煮え切らない状態を続けるよりは玉砕覚悟の決断で結論を出さねばならないときも人生には必ず存在する。
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