そんなの嘘

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 森俊之
解説 5thアルバム『魔法のリングにKissをして』の5番目に収録されている。不信がもたらす寂しさにあふれた別れの曲で、主人公の別れざるを得ない苦悩と「あなた」の気持ちのつかみ所のなさが特色となっている。
 ストーリー的に追うと、「あなた」が彼女持ちであることを知らないまま「"愛してる"」という台詞を信じ、「"別れるから"」の言葉に望みを託してきた主人公が、彼女の存在や「会いたい時 会えない」ことに始めは「"寂しくない"」「"大丈夫だよ"」と言って強がってきたが、イブの終了を機に「私だけの あなたじゃない」ことに別れを決意する内容になっている。
 個人的に興味深い描写は主人公が別れを決意する直前に最後の最後で迷っていて、その様を「ケイタイ つながらない 午前0時5分」「ベルが鳴り響く 午前2時10分 着信表示は あなたの名前」という風に携帯電話の表示で持って表している手法である。2時間5分という時間の経過が主人公の苦悩に実感を与えてくれている。それにしても夜分遅くに何してんだろこの人達(笑)。
 他の真夜ソングとも比較して触れて起きたい点が後二つ。一つは「サヨナラしなくちゃ だって 私だけの あなたじゃないから」の歌詞で、「星の夜」「海へLet's go!」「Alone」といった歌で想い人が他の女に関心を示したり付き合ったりすることを疎ましく思う一方で、「SECRET LOVE」同様この歌でもいざというときに非情になる−彼女から「あなた」を奪うという行為に出れずにいる。横恋慕を繰り返し必ず告白してきたダンエモンの方が非情である。最もダンエモンの場合は惚れた女が私を相手にしなかったために非情もクソもないのだが…(苦笑)。
 もう一点は主人公と「あなた」との具体的な関係で、「きっと あなたは電話してくるでしょう 私の気持ちを 無視して」「写真も指輪も 全部捨てる 一緒に買った灰皿も」という歌詞から主人公の苦悩を一顧だにしない態度や彼女がいながら「指輪」 (愛情の印)や「灰皿」 (ある意味同棲が類推される)の存在から見事なまでの二股振りが伺える。そして彼女に「会いたい時 会えないなんて 悲しすぎる」「I miss you」やといった苦悩を与えているのである。一言でいって「SECRET LOVE」「あなた」に続くケンカ売ってんのか貴様!第2弾である。
 最後に横恋慕になってしまう不道徳を避け、信用し難い「あなた」に見切りをつける主人公にはある種の賢明さがうかがえるとことを触れておきたい。世の中には信義に欠ける相手に振り回される人も多い。見習って欲しいものである。
 

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