それから、受話器を置いた

         作詞 麻生圭子 作曲 いけたけし 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんのセカンドアルバム『Le Port』の八曲目に収録されていて、その後もベスト版やシングル集では度々収録されている。しかしダンエモンは余り好きではない。というより歌詞内容が喜んで聴いたり、ノリノリで聴くようなタイプの曲ではないのである。
 とにかく冷め切っているの一言である。正確には冷めきった「あなた」の投げ遣りな態度に主人公もとうとうその熱を冷ましてしまって歌詞は終わっている。救いのないラストである。
 「じっと部屋で待った 電話ぐらいはせめて あると思ってた on my birthday」はこの曲がリリースされたと思われる1980年代半ば過ぎには携帯電話が存在せず、留守番電話さえそれほど普及していなかったことを考えると「じっと部屋で待った」という歌詞のいじらしさも窺い知れる。現代の我々から見ると待つ必要があるだけに、それを受けたときの喜びも大きいのだろう。そして本来は「予約をして 食事に出かけた」去年の様に思い出となる時間を供に過ごしたかったのが、電話さえなかったことにより一層の寂しさを募らせている様が窺える。
 うーん、道場主には誕生日に女性がらみの思い出がメールが一回、プレゼントが一回、受け取ったことがあるだけなんだよなあ…、それもお返しのようなものだったし翌年には忘れられていたし(苦笑)。この解説を作ったのは道場主の誕生日の二日前なのだが、その二日後には何かあるのだろうか?はっきりいって当てはないのだが。
 二つほどその冷めゆく様に触れておきたい点がある。一点は「逢うたびに会話は おたがいの性格の 意外なことだけ 気づかせる」で、この歌詞からはアツアツのときには互いのいい所しか見えなかったのが、冷めてゆくに従って欠点に目がいく様になり、「意外なことだけ 気づかせる」となったことが窺える。
 もう一点はラストである。「無言のまま受話器 …を置いた それから さよならを つぶやく」を見ると、恐らく主人公が恋に冷めてしまったのは昨日今日のことではないと見える。相手が気にかけてくれるなら依りを戻してもいいか、ぐらいの心境だろう。
 だがダンエモンはこの主人公に苦言を呈したい。「冷めた恋を相手のせいにしたいんじゃない!」と。でなければ引き止めの言葉もあったろうし、電話を切ってから別れを告げるような無意味なことはしないだろう。
 相手にとって意味がなくても自分にとっては意味のある別れの挨拶により一層の寂しさすらない寂しさへの演出を感じるが、出来ればダンエモンは今後の人生においてこの曲に同調する必要のない人生を全うしたいものである。


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