そうするかもしれない

         作詞 椎名恵 作曲 和泉常寛 編曲 勝又隆一
解説 冷めたカップルの空しさを歌う曲の中でも少々異色なこの曲は10thアルバム『蒼の時刻』の9曲目に収録されている。道場主はベストセレクションアルバムでも所持している。
 この曲に出てくるカップルが冷めきっているのは「二人話すことがない」「あなたの顔を 見てるのじゃない 遠く都会がきれいよ」といった歌詞からも明らかである。しかしながらこの歌詞に出てくる主人公の真意が読みにくい。「別れてしまうかもしれない」といったかと思えばすぐに「愛してゆけるかもしれない」という歌詞が出てくる。上っ面だけを見れば歌詞の意味するところは激しく謎である。
 それを知るには「別れ」にしても「愛する」にしてもその理由を主人公がつかんでいることに注目する必要がある。「別れ」たければ「あなた」のワガママに突け込めばいいのであり、「愛する」には感情を捨てればいいのである。勿論正常な人間がどちらを選ぶかははっきりしているが、敢えて主人公はどちらを選ぶか明確にせず、双方の可能性を仄めかしている。まるでどちらになろうと関心がないかのように。
 「愛に真実など 探した私愚かだわ」「真剣にならない あなたがそうね正しいわ」の歌詞からも椎名ソングには珍しい失望感が感じられる。喪失感を感じさせる歌詞は多いのだが、これは珍しいことである。余りに希望の持てない歌詞に眉を顰めたくすらなる。
 椎名さんは世の中にはこんな恋もあることを視聴者に伝えたかったのだろうか?それとも愛をやり直す為には時を待つことが大切であり、それまで別れずに済む方法を提示しているのだろうか?願わくば参考にしたくないものである。残念ながらファンとしての未熟さゆえかそういうメッセージぐらい読み取れない。


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