作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 Larry Honda
解説 大好きである!! アルバム『POSITIVE SPIRAL』のトリの位置にもろに始まりを意味するこの曲が来ることこそ大黒摩季イズムの真骨頂なのである!!
と、エラソーに断言しているが、これは同アルバムの初回特典DVD 収録の「セルフライナーノーツインタビュー」で摩季さんが語っていたからであり(笑)、摩季さんは「最後に「START LINE」で終わる自分ってカッコいい。」、「(デビュー)15周年記念に対する「ありがとう」の言葉を着地点にしたくなかった」との旨をこの「START LINE」への想い、並びにこの曲をトリに持ってきた理由として語っていた。
摩季さんは「15周年おめでとう」と言われる度に「そこで終わらずに走りだしてくて堪らない自分」がいるということを語っていたが、それこそまさにダンエモンが惚れた大黒摩季そのものである。
歌詞の内容は極めてシンプルである。それまでの無難を選び、大きな流れから外れる生き方を避けてきた主人公に芽生えた、これでいいのか?という思いから一念発起して「START LINE」に立とうとする気持ちを歌ったものである。
歌詞は大まかに分けて3通りに注目できる。1つ目は現代社会が抱える虚無感、2つ目はそこに対する疑問、3つ目は「START LINE」に別の「LINE」を並行させて述べる決意である。
1つ目を示す歌詞は、「立ち止まることが 怖かった 流れから外れる勇気 無かった」に、「「いつの日か…」「いつかきっと…」って 引き寄せて引っ張らなきゃ来ないね」である。
この曲限らず、ダンエモンが摩季ソングに共感するのは、同時に自らの至らなさや弱さを突きつけられればこそであることも多い(苦笑)。前者には社会の不条理を許すさず、自分は自分で生きていくことを豪語しつつ、結局は無難を求め、自らが巻き込まれない分には見て見ぬふりをする弱さを引き摺って生きていることを痛感させられ、後者には「やりたい、やろう」と念じつつもその10分の1も行動に移せているかどうか疑わしい自分がいることを思い知らされるが、そう思いつつ「出来ないから…。」と現状に甘んじることこそが一番良くないことであることを今一度噛み締めたい。
2つ目の注目点を示す歌詞は「人一倍 頑張って 擦り切れた先に勲章とか 賞賛も無くただDROP OUT自分を懸ける価値は ねぇ そこにあるかな?」がその最たるものであるが、この展開はダンエモン一押し摩季ソング「LOVING′YOU」と似ているのが嬉しい…………って、「栄光の金バッチ」の解説でも同じこと書いていましたね (苦笑)。
そしてコアである3つ目の注目点。
数々の内省を経て自らの心の中に引く「START LINR」が大切なのは言うまでもないが、それを際立たせる他の「LINE」の描写が秀逸である。
「不安を描いてしまう前に」越えるべき「BORDER LINE」、「自分の手で 煌く未来を閉ざさない」為に決して引いてはならない「DEAD LINE」、「少ししんどくても心は クリアでい」る為にはっきりさせておきたい「HARD LINE」、とすべてが「START LINR」と時に対為し、時に共存しながらそれを際立たせている様は何度聴いても、何度口ずさんでも気分がいい。
話が前後したが、「セルフライナーノーツインタビュー」によると、この曲の摩季さんの最も好きな歌詞にして、最も訴えたいことは「気づいたとき その時が始めるべき時」である。つまるところ、「START LINE」とは自分で引くものであり、失敗を恐れていては決して引くことのできない物であることが述べられていた。その概念は「POSITIVE SPIRAL」、「Groove On〜脱いでごらん〜」、「最良の日」、「コレデイイノ?!」、「GO☆」、「栄光の金バッチ」をメインに多かれ少なかれアルバム『POSITIVE SPIRAL』収録曲すべてに根底で共通している。
故にこの「START LINE」は同アルバムを締め括り曲でありながら、同時に大黒摩季イズムに次なる「START」の号砲を鳴らす曲でもあるのだ。
摩季さんが語るように、失敗のない人生なんて存在しない。そして失敗を乗り越えずして更なる成長もあり得ない。恥ずかしながらダンエモンの人生は失敗が多く、同じ失敗を繰り返していないかということについても全く断言出来ない。だが失敗を恐れてチャレンジ精神をなくしたり、自らの失敗を誤魔化したり、目を逸らしたりする人生を送りたくない。
それ故にダンエモンの一押し歌詞は「START LINE やり直せる 何度でも今 今日からでも」である。決してこの歌詞に甘えるのではなく、全力を尽くして尽くして尚苦境に立たされた時の糧として心に留めたい。
余談 「セルフライナーノーツインタビュー」での摩季さんが人生の失敗に対する向き合い方を語っていた内容を受けてダンエモンは思った。
自らが取った言動が生んでしまった失敗・非を認めることの出来ない奴は可哀そうだ。と。
生き馬の目を刳り抜くような世知辛い現代社会でいつしか「勝てば官軍」、「敗者が悪」、「2位もビリも一緒」との結果至上主義や極論が横行する中で悪人呼ばわりされたり、負け組に入れられて白眼視されたり、なめられることで屈辱の人生を強いられることを恐れる余り、逆切れ・屁理屈・暴論で自らの主義主張及び既存の言動の非を認めない風潮が蔓延しているが、結局それは自分が「こんなことされた嫌だ」と思う事をする連中と同じ行動を取っており、自らの失敗や非を認めない内はそれ以上の成長は決して見込めない。
こういうことをエラソーに断言できるだけの実行動がダンエモンに伴っているとは言わないが、「言ったもん勝ち」が横行し、チョットした言動もすぐに挙げ足取られることも多く、何を言っても必ず反対意見を述べる奴が存在するネット社会だからこそ、せめてネット上でこの解説を見た人にはこの問題を真剣に考えて欲しい。決してダンエモンに賛成しろ、などとあつまかしいことは言わないから。
摩季の間へ戻る 平成二〇(2008)年三月一日 最終更新