すべてを捧ぐ愛の詩

         作詞 椎名恵 作曲 ショパン
解説 クラシックをカバーした椎名恵さんのアルバム『toy box〜Classical〜』の9曲目に収録。元曲はショパンの「エチュード.作品10の3番」別名「別れの曲」である。
 同アルバムの歌詞カードによると、椎名さんは「ショパンの「エチュード.作品10の3番」別名「別れの曲」をしっとりと歌えるように、そして元々の椎名恵のスタンダードナンバーと思えるように、アレンジしました。」とコメントしている。
   確かに歌詞内容は主人公の持ち得るすべてを「あなた」「余さず捧げ」る事で「愛」の証としている一方で、逆の見方をすると主人公には「愛」しかなく、それがなくなるならもう何がどうなってもいい、とでも言いたいかのようなAll or Notihng的要素もふんだんに感じる。
 必然、穏やかな曲調と静かに見守るような出だしの歌詞を経て、歌詞のエッセンスは「あなたを愛して行く事が今の 私にできるすべてだから この心 余さずに捧げよう」の部分に強く濃く凝縮されていると言える。
 だが、ダンエモンが注目したいのはむしろその直後の「言葉は想いを 伝えないと言うなら あなたをいつまでもこの胸に 抱きしめましょう」である。「C'est la vie」に一節を彷彿とさせるこの歌詞は言葉が伝えきれない温もりを与える抱擁の魅力に溢れている。
 さて、視点を広く、大きく、ガラリと変えると、この曲の持つ「愛情」は男女の恋愛感情に限定されない。「ほのかに輝く月のように 見守りましょう」「この瞳が替わりに」には大地や大海の如き包容力溢れる母性愛もまた感じられる。そう考えると「あなたを愛してゆけないのならば 私の身体からすべての 愛情を 失くしてもいいのよ」の歌詞は何処か依存的なようでありながら、抱く愛情へのかけがえのなさが魅力でもある。
 荒廃した街の中での孤独から光り溢れる希望に誘ってくれる「今夜はANGEL」の穏やか曲調版とすれば、古典名作の名声に潜む様に椎名ソングの原点をこの曲は保持しているわけで、一ファンとしてもこのエッセンスをいつまでも堪能したいと同時に、椎名さんにもこの心をいついつまでも忘れないでいて欲しいものである。


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