summer day

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 建部聡志
解説 岡本真夜さんの9thアルバム『再会〜君に綴る〜』収録曲のラッキーセブン。失った過去の恋を辛さに耐えて、敢えて凝視する事でその恋が間違いでなかったことを噛み締める曲である。
 この歌の歌詞は三つの点で注目したいものがある。まず第一は主人公の意思である。その点において挙げる歌詞は「好きになったことも あなたに出会えたことも 忘れないと決めた summer day」である。
 主人公は「"失恋試し"」と称して、思い出の場でもある「二人でよく行った海」に向かい、自分自身が「吹っ切れた」のかどうかを試さんとしている。勿論答えは「あなたがいなくても 一人で行けるのよ」に表れているのだが、それは過去の喜びも別れの辛さも噛み分けた上で二人でいた時間を人生における大切な思い出としての認識に迷いがないから出来る断言なのだろう。だから主人公は「忘れないと決めた」のである。「二人でよく行った」であろう夏の日=「summer day」に。
 次に注目したいのは偽れない本音を示す歌詞である「忘れようって 何度も一人でもがいた 嫌いになれなかった 大好きだったことに変りはないから」である。実際に思い出の海に来るまで主人公は自分自身の立ち直りに自信が持てず、実際に思い出の整理に至るまでには「あなた」を忘れたり、嫌いになろうとしたりしたこともあったと見える。だが、どんな詐欺の天才も自分自身を偽る事は出来ない(ふるまう事は出来てもそれは他者を欺いているに過ぎない)。人生には好ましからざる別れも多い。だがだからと言って心から愛し合った時は時でそれを偽りにする必要はない大切さをこの歌詞は教えてくれる。
 最後は思い出と現状を踏まえて今をどうあろうとするかの決意を示す「思い出にするには もう少しかかるけれど 泣き虫は通り過ぎたから 風に吹かれながら 走って行く high-way」である。主人公は完全に気持ちの整理をつけたわけではないが、それは無理もない事で、無理が全くないようなら過去の恋は重みのなかったものと言うことにもなる。だが、過去の恋を本当に大切に思えば、それが如何なる形をとろうともそれを後々の人生に生かす事は出来る。その点において確信があるから主人公は最後の最後に「きっと新しい何かが待ってる」という言葉を推量形ではあるものの、決して単なる希望的観測だけでない、意志と決意と本音を伴って歌詞の締めにも使えるのだろう。
 余談:かつて道場主は何度かの失恋を経験しているのだが、道場主が惚れた相手は有り触れた名前の人が多かったので、TVや漫画を見るだけで簡単かつ否応無しに「"失恋試し"」を行っていた(苦笑)。


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