SUMMER TIME

作詞 Du Bose Heyard 作曲 George Gershwin

訳詞(by道場主)

 夏…
 子供は健やかに過ごし、
 魚は飛び出し、
 そして綿の木、
 綿の木は高く成長する

 お父さんはお金が儲かり、
 お母さんは綺麗になる。
 坊や、お静かになさい
 泣いてはいけません。

 こんな朝の中のある日
 立ち上がって、唄いたくなる
 翼を広げたくなるね、ぼうや
 そして空へ、
 空へと飛び立っていくのでしょう

 でもその朝が来るまでは
 可愛い坊やよ、邪魔をしないで
 どうか、どうか、泣かないで

 夏…
 子供は健やかに過ごし、
 魚は飛び出し、
 そして綿の木、
 綿の木は高く成長する

 お父さんはお金が儲かり、
 お母さんは綺麗になる。
 坊や、お静かになさい
 泣いてはいけません。

 坊や、お静かになさい
 泣いてはいけません。



解説 大黒摩季さんの初のセルフカバー・アルバム『LUXURY 22-24pm』の初回限定版に付属されているDisc2の4曲目に収録。ジョージ・ガーシュウィンの作曲したオペラ『ポーギーとベス』の第1幕にて、黒人の漁師ジェイクの妻クララが歌う子守唄となっている。
 ………ってこの解説の為に調べて初めて知ったんですけどね(苦笑&他の洋楽も同様)。


 訳してみて思ったのだが、この「baby」=坊やは、何に泣いていたのだろうか?
 単純に、赤ん坊は泣くもので、そこに四季は関係ない筈である。
 「cotton」の収穫や、「fish」の水揚げで、「rich」になれる日が近いから、「Don’t you cry」=泣かないで、とあやされても、赤ん坊が泣くのに親の収入もへったくれもない、と考えてしまう。
 もし、漁師である「daddy」が、遠洋漁業に出ているのであれば、父親恋しさに泣き暮らしている「baby」に、もうすぐ父親が帰ってくるから、と励ましている姿とも取れる。


 敢えて深読みすれば、主人公であるクララが歌いかけているのは「baby」と同時に自分自身に対しても唄いかけているのではあるまいか?
 前述の推測通りに、夫が遠洋漁業に出ているのなら、その帰りを待ち侘びている気持ちは「baby」のそれに勝るとも劣らないものがあろう。


 別の見方をするなら、遠い海に船出し、なかなか家に帰ってこない夫同様に、「baby」もいつの日か大人になって、我が元を離れる日が来ることを憂いつつ、せめてその日までは側に居て欲しい気持ちもこの歌のコアだろう。「You’re gonna rise, ries up singing, You’re gonna spread your wing, child And take, take to the sky」の歌詞はそう何度も繰り替えされる歌詞ではないのだが、それだけに一瞬の歌詞に込められた想いには深いものがある。


 「Summertime」は毎年必ずやって来る。そして夫が漁業に、自らが綿花栽培に従事するのも毎年のことなのだろう。
 しかし、我が子が「baby」のまま父親の不在を泣き暮らすのも短い時間なら、自らの夢を求めて旅立つまでの時間もめちゃくちゃ長い時間ではない。
 生業や成長の為、家族が共に居ることが出来ない時間があるのは止むを得ない。だからこそ、願わくばクララ一家に限られた時間が幸多いものとならんことを祈りたいものである。


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平成二一(2009)年五月三日 最終更新