作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 河野圭
解説 同名である摩季ネェのアルバム『すっぴん』のトリである12曲目に収録されている。「No Make」である、化粧をしていない「すっぴん」を容姿だけではなく、心情や行動においても「素顔」でいることに準え、主張しており、同アルバム収録曲にも「WILD FLOWER」、「Our Home」、「ROCK&SHOUT」、「TAKE OFF」、「I’TS ALL RIGHT」、「LIFE 〜episode�� 挫折〜」等、本音で生きる意味において「すっぴん」的要素を含んだ物は多い。
またこのアルバムのジャケットにて摩季ネェは「すっぴん」で出ている。
歌詞の内容は「すっぴん」=「素顔」で生きる事を愛する人に勧める内容になっている。歌詞から類推するに、「あなた」は常日頃、(恐らくは職場にて)真面目を装い、片意地を張り、常に誰かに見張られていると意識しなければならないような環境にいるのだろう。
そんな「あなた」の日常に対して主人公は、「いつも誰かに見張られて追い込まれて そんなものに純なあなたを奪われたくないの だから」と「素直なあなたなのに 誰かと同じにならないで」と心配し、「私達だけでも すっぴんでいよう ナチュラルにいよう」、「あなたといる時は すっぴんでいよう 足し算でいこう」、「失敗や間違いを取り繕うくらいなら ごめんねって 見つめ合って もっと熱いアツ〜いKissをしよう」と呼び掛けている。
微笑ましいのは、主人公がそんな「あなた」に対して片意地張らず、「素顔」で生きられる場をと関係であろうとしていることで、冒頭の「もう 頑張らなくて良いよ 私の前では ありのまま そのまま 素顔のあなたでいて 大丈夫 わかっているから」を始め、「楽しく 酔いつぶれてまた 帰りのタクシー 私の膝枕で 隙だらけの寝顔も わりといいよ」、「標準装備をNo Makeにしてみれば Makeする日がスペシャルに変わる もう 怯えなくていいの」、「小じわもドジなとこも 愛してくれる人長〜くいたい」と言った歌詞に「素顔」の「あなた」を心底愛している歌詞をちりばめている所である。
確か、恋愛関係、ひいては夫婦関係とはかくあるべき様にも思われる(何せ夫婦になった経験がないんで……)。
私事だが、「楽しく 酔いつぶれてまた 帰りのタクシー 私の膝枕で 隙だらけの寝顔も わりといいよ」の歌詞を聴いた時、ダンエモンは道場主の父上から昔聞いた話を思い出した。
かつて父上は弟(つまり叔父上)と飲みに行った際、叔父上の行きつけの居酒屋で飲んでいた叔父上が酔い潰れた。この時、居酒屋の女将さんは叔父上が本気で酔っている所を初めて見たとのことだった。
当時の叔父上は職務上、接待で酒を飲む事が多く、得意先より酔い潰れそうになった場合にトイレに行く振りをして無理矢理吐いてまで接待に務めることもしばしばだった。それゆえにその居酒屋で飲む女将さんは仕事で飲む叔父上しか知らなかったので、父上が叔父上の兄である事を知って、大いに納得するとともに、本当に楽しそうに飲む叔父上を初めて見たとも仰っていた。
恐らくはこのシーンの「あなた」もまた道場主の叔父上と同じ状態だったのではあるまいか?兄弟と恋人同士という違いはあるが。
なかなか「素顔」や本音では生きられない世の中である。会社での飲み会だけではなく、時には身内や学生時代の級友や趣味仲間で集まる時までありのままに振る舞えるとは限らない。
『論語』の有名な「我、十有五にして学に志す…」で始まる一節の最後に「七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず」とあり、やりたいように振る舞って周囲に迷惑を掛けないようになるまで孔子様でさえ齢七〇まで掛っているのである。
そう考えると人間の未熟さゆえに「すっぴん」で生きることは難しく、「すっぴん」を突きつけ合いながら生きることに幸せを感じられるのが人生最良の伴侶なのかも知れない。
尚、アルバム『すっぴん』初回限定盤付属Disc2に収録されている「セルフライナーノーツインタビュー」によると、摩季ネェは「「すっぴん」を見せたい訳じゃない」とのことで、素顔で生きるという「自分への誓い」という意があるとコメントしている。
実際、そう思うに至ったのには「自分の素顔を自分で見られない」ゆえに、素の自分への疑問があった、と述べている。
注目したいのは、「セルフライナーノーツインタビュー」内における他の曲へのコメントに比べて、歌詞に対する言及が多い。
最初にありのままのあなたでいて「ありのまま そのまま 素顔のあなたでいて」の歌詞に対して、「私もいるから」との想いがある事を述べていた。
実際、摩季ネェは想い人だけではなく、ファンに対してもライブの場等を通して「皆の隠れ家になりたい」とするも、10曲目ぐらいまでは疲れた顔が目立つらしい。勿論後になればなるほど、開けた顔になり、「ら・ら・ら」のときに至って、「それ!それ!その顔!」と思うに至り、その表情に対して「会社でも出来るといいね」と思うらしい。
ともあれ、「すっぴん」に対する摩季ネェの意志は「見てね、というよりそう生きられる誓い・エール」で、ここでも歌詞の「標準装備をNo Makeにしてみれば Makeする日がスペシャルに変わる」を引用し、「標準装備をひっくり返して」と勧めていた。
また女性ファンに対しては「ひと月1万円 二十歳から還暦まで キャあ! 480万円! 一つ二つ減らせば ケチらずに ドバイにも行けちゃう」の歌詞の内容をそのままメッセージとして述べていた。
言葉悪く言えば、歌詞を知っていれば改めて述べられる事でもないのだが、別の見方をすれば、それだけ摩季ネェのこの曲並びにアルバムに対する想いが強いのだろう。
摩季の間へ戻る 平成二四(2012)年四月一三日 最終更新