すれ違いのTrouble

         作詞 椎名恵 作曲 羽場仁志 編曲 樫原伸彦
解説 椎名恵さんの6thアルバム『C'est la vie』の8番目に収録されているこの曲は恋人の浮気を偶然に目撃してしまうと言うショッキングなシチュエーションが舞台になっている。
 道場主はかつて惚れていた女性が彼氏持ちかどうかわからない段階で偶然に彼氏と一緒に腕を組んで歩いているところを目撃して愕然としたり、ラブホテルから出てくるところを目撃してショックの余り丸二日間仏頂面で過ごしたことがある。勿論この場合、惚れていた女性とその彼氏は正当な恋人同志だったので道場主が如何に激情に駆られようと非を唱えられるいわれは全くない。
 だがこの主人公の場合、明らかに恋人が浮気しているのである。道場主が同じ立場にたたされたらどうなるか想像するだに恐ろしい(苦笑)。
 まず注目したいのは偶然に見てしまった「あなた」の浮気を視覚の上で確信しつつも心の中で認めたくない気持ちである。上記の道場主が想い人と彼氏の逢引きを目の当たりにした時もできれば見なかったことにするか、人違いと思いたかったが、自分自信を誤魔化す事はできずに苦しみに囚われる事から逃れられなかった。それゆえに主人公の「確かめたい気持ちで ダイヤル回すけど」「見なければよかったわ ついてないトラブルね」といった気持ちはよくわかる。
 背景から見ると主人公はかなり多忙な人のようである。そしてその多忙ゆえに「あなた」とも余り会えず、それゆえに「あなた」が浮気に走っている、と類推される。「わかってくれていると 信じたのは 私だけなの」という歌詞が哀れさを誘う。
 結局この歌の歌詞は解決を見ることなく終っている。多忙を極める仕事にも身が入らないようであり、また「確かめたい気持ちで ダイヤル回」した結果についても触れてはいないが、敢えて触れなかったのだとすればその結果は推して知るべしである。「あなた」の潔白が証明されたのなら苦しむ事もないだろうから。やはり人間、自分自身は誤魔化せないのである。
 最後に注目したいのは主人公が「あなた」の浮気を全く責めず、「見なければよかったわ」と言っている事である。やはり多忙にかまけて会えないことに罪悪感を感じているのであろう。浮気そのものの事実より浮気を知ってしまった事に苦悩の根源があるのは惚れた弱みだろうか?


恵の間へ戻る