ただ一脚の椅子
解説 椎名恵さんのフォースアルバム『29〜Twenty nine ダブルコンチェルト』の8曲目に収録されているこの曲は思い切って買った贅沢品であり、タイトルでもある「ただ一脚の椅子」を例えに「もう一度 恋する勇気」を求める心を歌っている。
主人公の恋に関する経緯は不明であるが、背景から再び恋をするのに躊躇する恐怖心を経験の中から抱いてしまっている様である。確かに苦手意識を持ったり、一度知った痛みの恐れに飛びこむのは容易な事ではない(可能不可能はこの際別問題)。勿論そこで求められるのは「勇気」であり、その手の「勇気」が求められる局面は人生において少ないくない。
そしてそのように求められる「勇気」−例えて言うなら思い切りの気持ちを「贅沢すぎ」る「プライス」である「ただ一脚の椅子」を購入する思い切りと供に手にしようとしている様、それでいて背後に「傷ついた自分のために」という気持ちが見え隠れしているのが何ともユニーク且つ興味深い。
もう一つ注目したい歌詞は「形が愛にあったら 誰も悩まずにすむのに 人は弱いわ」である。結果のすぐに出ない努力を続ける事や直接目に見えない神仏や未来や理想を信じる事は容易なようでその実大変むずかしい。そう考えると、或いは「ただ一脚の椅子」とは主人公が勇気の象徴として求めた目に見える物なのかもしれない。
目に見えない望みに挑もうとする時、不安や恐れよりも希望の為に敢えて目に見える何かを求めるのは結構有効な手段かもしれない、とこの歌はダンエモンに教えてくれた。
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