黄昏のビギン

作詞　永六輔　作曲　中村八大

解説　椎名恵さんのセカンド・マキシシングル「空色のドア」のC/Wとして収録(後にファースト・ミニアルバム『君よ、永遠にあれ』の4曲目にも収録)されているが、この曲はカバーで、椎名さんのオリジナルではない。
　道場主が父に聞いた話によるとかつてちあきなおみさん(←シルバータイタン「『仮面ライダーV3』でキバ男爵を演じた故郷鍈治氏の細君だ。」)が歌っていて、それもカバーだったらしい。つまり時代を越えて称えられるべき名曲と言う訳である。
　歌詞の内容を一言で言い表すなら「出逢い」だろう。そしてそれに付随する「初めて」の経験。具体的には「初めてのキス」に通ずるわけだが、双方の背景に「たそがれ」と「雨」がある故に想いの深いものとなっている。
　注目したいのは「傘もささず」に「歩きつづ」けるような熱中ぶりで、そんな時間と空間を共有するからこそ「ふたりだけの　たそがれの街」となるのだろう。何と言っても「たそがれ」と「雨」という光と温度の欠ける中での熱い、というより温かいムードが心地いい。
　少し突っ込んで二人の動きを見てみるが、「唇　濡れて」、「こきざみにふるえ」とあるから体は寒さを感じているのであろう。だが体で寒さを感じ、心で温かさを感じるからこそ、自然と唇と唇が触れ合うのだろう。「初めてのキス」を交わす「並木の陰」という限られた空間はさぞかし心身の暖まる場であろう。
　短い歌詞に凝縮されたささやかに、ほのかに灯るような温かさを大切にしたい一曲である。

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平成一九(2007)年一月五日　最終更新